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《ブラジル》投票印刷法案が下院本格審議へ=電子投票方式の旧式化を補足

 選挙の投票方式を現行の電子投票だけから、電子投票した結果を紙に印刷(ヴォット・インプレッソ)する機能を付け加え、投票不正疑惑があった場合に紙で再集計する方式に切り替える法案を討議するため、下院が全体審議を行うことが決まりそうだと9、10日付現地紙、サイトが報じている。
 ヴォット・インプレッソに関する法案は、ボルソナロ大統領が昨年の米国での大統領選後、「わが国の投票もヴォット・インプレッソにすべきだ」と繰り返し主張したことで、大統領支持派の議員たちが提出したものだ。
 米国の大統領選は紙の投票で行われ、トランプ大統領自身が選挙結果が出た後も数カ月にわたり、不正を訴えていた。また、そのために、ボルソナロ氏がバイデン氏の当選を認めるのが遅れ、国際社会の流れに乗り遅れる原因ともなった。
 このボルソナロ氏の主張に対し、最高裁判事で選挙高裁長官でもあるルイス・ロベルト・バローゾ判事は、「1996年に導入されてから、1度も投票不正が明らかになる問題は起きなかった」「投票印刷にするのは憲法違反であり、時代遅れ」とかねてから批判し続けている。
 そうしたことから当初は進んでいなかった法案審議だが、ここにきて大統領候補のシロ・ゴメス氏の民主労働党(PDT)も支持をはじめたことから、動き始めていた。

 エスタード紙が報じるところによると、現状では、同法案を審議する特別委員会の委員33人のうち、21人が全体審理に賛成しているという。反対はルーラ元大統領の労働者党(PT)とレデ所属の下議の4人のみで、態度を明らかにしていない下議が7人いるが、いずれにせよ全体審理は確実な様相だ。
 この法案が支持を集めている背景には、ブラジルで採用されている電子投票の形式が旧式化したことがあげられている。10日付フォーリャ紙は、現在、電子投票を採用している国のほとんどが、紙による本人確認を機械が読み込む形の「第二世代」の電子投票によるものだと指摘。本人確認を行わず、ただ単に登録だけを行う「第一世代」の電子投票を採用しているのはブラジル、バングラデシュ、ブータンのみだという。
 同法案の作成者であるビア・キシス下議が提案を行っているのは、この形式に沿ったものだ。
 バローゾ判事は9日、ヴォット・インプレッソ化に関し、「認められれば、これまでの選挙不正防止の歴史が汚されてしまう」と改めて批判している。
 選挙高裁はすでに次回選挙は電子投票のみで行う方針も表明している。同判事は改めて、投票形式変更の場合、2022年の選挙には間に合わないことも主張している。