17日、上院のコロナ禍の議会調査委員会(CPI)は召喚予定だった企業家のカルロス・ウィザルジ氏が出席を拒んだことと、上院でのエレトロブラス民営化に関する暫定令の審議の必要のため、同日の証人喚問を中止した。ウィザルジ氏はボルソナロ大統領が保健省外に作っていた「影の委員会」の中心人物のひとりとされ、その証言が注目されている。17日付現地サイトが報じている。
ウィザルジ氏は英会話スクールのチェーン経営や外食産業などで名を成した、現在の伯国ビジネス界で注目の人物。ボルソナロ大統領と懇意なことでも知られている。昨年は、医療関係者でないにもかかわらず、マンデッタ氏の後任の保健相候補にもあげられた。
ウィザルジ氏の名前は、今CPIで頻繁に指摘されている「影の委員会」を語る際に度々浮上してきており、同氏が連邦政府のコロナ対策に口出しをしていた可能性が高いと見られている。
そのため、17日の委員会への召喚とその証言は注目されていたが、当日になってウィザルジ氏が召喚を拒否した。
この前日の16日、ウィザルジ氏は「召喚相手への敬意が足りない」として最高裁に訴えを起こし、17日のCPIでの黙秘と出頭拒否の権利を求めた。16日に証言を行ったリオ州前知事のウィルソン・ヴィッツェル氏は出頭拒否や黙秘権も認められていたが、委員会に出席して証言を行っていた。同日は、委員会の最中に割り込んだ大統領長男フラヴィオ上議と罵り合いを行うなど混乱が起こった。
ルイス・ロベルト・バローゾ判事はウィザルジ氏の黙秘権行使を認めたが、出頭拒否の権利については、議会の判断に委ねた。
このため、同氏は同日、家族の健康上の理由で米国にいるからビデオカンファレンスで証言を行いたいとCPIに要請。証言を行う日もCPIと相談の上で決めたいと求めたが、CPIの委員長たちはこれらの要請を拒否していた。
CPIは16日に、ウィザルジ氏の電話の通話記録や銀行口座の情報開示を承認する決定も出した。ウィザルジ氏はコロナウイルスに関して、フェイクニュースを拡散した疑いがあったためだ。
このようなやり取りがあった後にもかかわらず、ウィザルジ氏が17日に出頭を拒否したことにCPIは不満をあらわにした。オマール・アジス委員長はこの日、連警による強制連行と事情聴取と同様に、ウィザルジ氏を強制的に委員会に連れてきて証言させることを認めるよう、裁判所に求める意向を示した。同委員長は、ウィザルジ氏が国外逃亡を図るのを防ぐため、パスポートを没収することも求めている。
ウィザルジ氏の召喚拒否に伴い、この日に同時に予定されていた連邦会計検査院(TCU)会計監査官のアレッシャンドレ・フィゲイレード・マルケス氏の証言も延期となった。現時点では振替の日時は決まっていない。
マルケス氏は、TCU内での職責を利用し、各州から発表されるコロナの感染者や死者の数を疑う報告書を作成したとして、停職扱いになっている。虚偽の報告書の存在はボルソナロ大統領の発言から判明し、ボルソナロ氏の友人でもある同氏の父親がその報告書を大統領に手渡したと、本人が上司に報告している。
TCUは同件に関する内部調査をはじめたが、連警にも捜査を依頼している。
今週のCPIは荒れ模様となった。前日16日のヴィッツェル氏の証言では、連邦政府がリオの連警がリオ市議だったマリエレ・フランコ氏殺害事件の捜査妨害を行ったことがほのめかされたほか、「守秘義務がかかっているから言えないが、連邦政府によるきわめて重大な干渉行為が存在する」との発言も行っている。
なお、CPIのメンバーは、喚問中止を決めた後、エレトロブラス民営化に関する暫定令の審議に加わった。この暫定令は22日までに承認しないと無効となるが、現時点では下院が承認したものに修正が加えら、上院で承認後に下院に差し戻しとなる可能性があり、審議が急がれている。