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【日本移民の日2021年】東京五輪=メダル期待されるブラジル人選手たち=リオ五輪を超えることはできるか?=新種目スケートボード、サーフィンも

 いよいよ7月23日から、1年遅れで東京五輪が開催される予定だ。コロナが絡んでいるため、状況次第ではまだどうなるかはわからないが、前回がリオ大会ということもあり、日本とブラジルを結びつける貴重な機会ではある。今回は、この東京五輪において健闘が期待されるブラジル勢を見ていくことにしよう。

 前回のリオ大会は、これまでの五輪にない強化費を使えたこともあり、五輪での過去最高の成績(金5、銀5、銅10)を収めることができたブラジル。
 だが、ブラジルに限ったことでなく、南米自体が歴史的に五輪に関して非常に冷めている国民性ということもあり、リオ五輪後にも「オリンピック熱」が国民のあいだで盛り上がり続けているかと言われたら、それはかなり微妙だ。
 前回大会ほどの強化費が充てられたとは言えず、加えてコロナ禍も重なって、人々の意識がスポーツにまで至る機会がほとんどないからだ。
 そうしたこともあり、東京大会でのブラジル勢のメダル増は正直なところ期待はできない。

黄金メンバーが揃ったサッカー代表

 まず、金メダルが期待出来る最右翼は、やはり2連覇を狙いたいお家芸サッカーだ。今回の大会では、対象年齢の上限の「1997年生まれ」がブラジルサッカーにとっての黄金世代であること、それ以下の生まれにも早熟で活躍している選手が多いことから、「豪華メンバーが揃っている」として世界的な話題にもなっている。
 すでに本代表選手や、欧州クラブの重要選手になっているため、五輪世代選手の全てが招集されているわけではないが、「ほぼ、これが五輪代表選手になるであろう」と目されている6月時点での招集選手の顔ぶれは実に豪華なものだ。
 フォワードにはロドリゴ(レアル・マドリッド)、マルチネッリ(アーセナル)、アントニー(アヤックス)といった、欧州の一流クラブですでに活躍していて、日本のサッカーファンにも知られた選手がずらりと並んでいる。そこに司令塔として、昨年のブラジルリーグで新人王にして得点王に輝いたクラウジーニョ(ブラガンチーノ)が加わる。
 さらにボランチにフラメンゴのスター選手のジェルソン、欧州ですでに活躍中のブルーノ・ギマリャンエス、ディフェンダーにもエメルソン(ベティス)、イバニェス(ローマ)、ガブリエル(アーセナル)と欧州強豪のレギュラーがズラリ。
 この豪華メンバーを前に、通常3人までが選ばれる「オーバーエイジ枠」の招集は不要なのでは、という声まであるほどだ。
 若手選手がここまで充実している例は世界でも珍しく、これがリーグ戦なら優勝の確率はかなり高いだろう。ただ、トーナメントはそのときのコンディションが強く影響する上に、五輪はそれがひときわ短い。選手たちのそのときのモチベーションとゲーム運。ブラジル代表が2連覇するか否か、全てはそこにかかっているだろう。

初の正式種目でメダル候補

メジーナ

 現状、サッカー以外でもっともメダルの期待値が高い競技は、東京大会から正式種目になる新しい競技だ。それはスケートボードとサーフィンだ。この二つの競技で伯国は世界ランキングの上位選手を抱えている。

スケートボードのパメラ・ローザ選手(本人のフェイスブックより)

 中でも最有力と目されているのはパメラ・ローザ。2019年、20歳のときに参加したロンドンで行われた「ストリート・リーグ・スケートボーディング・ツアー」で優勝。これで注目を浴びた彼女は現在、女子の世界ランキング第1位。伯国内での注目度も急上昇中だ。
 パメラを追うのは世界ランキング2位のライッサ・レアルだが、彼女はなんと13歳。五輪のような大きな大会では、中学生相当の年齢ではプレッシャーも懸念はされるが、逆に勢いに乗れば一気に勝機を望める。

サーフィンのガブリエル・メジーナ選手(Secretaria Especial do Esporte, via Wikimedia Commons)

 パメラ、ライッサの若いパワーに押されがちではあるものの、それ以前のブラジルスケートボード界の女王、レティシア・ブフォーニも虎視眈々と優勝を狙う。また、男子では2018年の世界一のペドロ・バロスも控えている。
 サーフィンでは、ここ数年の優勝常連で2021年現在の1位ガブリエル・メジーナと、彼の最大のライバルで2019年王者のイータロ・フェレイラがともに金メダルを狙っている。
 また女子では、米国との二重国籍者で2018年に、これまでアメリカ籍でプレーしていたところをブラジル籍に替えて話題となったタティアナ・ウェストン・ウェブにもメダルの期待がかかる。

リオ大会で話題の選手たちも参加

 リオ五輪で話題になった選手の2大会連続での活躍も期待されている。
 その代表格がカヌーのイザキアス・ケイロスだ。リオ五輪では一般的には無名ながら、二つの銀メダルに一つの銅メダルを受賞し一躍脚光を浴びた。東京五輪でもそれに続きたいところだ。

男子体操のアルトゥール・ノリ選手(Agência Brasil Fotografias, via Wikimedia Commons)

 男子体操では、リオ大会の床運動で銅メダルのアルトゥール・ノリ、ベテランのアルトゥール・ザネッティにメダルの期待がかかる。前大会で急成長し、その甘いマスクで女性ファンからも注目された日系のノリは、本来彼が得意とし、ここ数年は国際大会でメダルを獲得している段違い平行棒で悲願の金を狙いたい。
 一方、ザネッティは世界的なエキスパートと目されている吊り輪で12年ロンドンの金、16年リオでの銀に続く3大会連続でのメダルといきたいところだ。
 柔道はリオ大会で男子100キロ超級だったラファエル・シウヴァ、女子78キロ級で銅メダルだったマイラ・アギアルが出場。両者ともにここ数年の世界大会は目立った成績をあげていないが、経験値での踏ん張りを見せたいところ。
 前回大会の女子セーリングで金メダルを獲得したマルチネ・グラエルとカヘナ・クンゼのコンビは、その後の世界大会でも好調を維持。2大会連続での金を目指す。

ビーチバレーのアガタ・ベドナルズク選手(Fernando Frazão/Agência Brasil, via Wikimedia Commons)

 ビーチバレーではリオ大会で女子銀メダルを獲得したアガタ・ベドナルズクが22歳のドゥーダ・リスボアをパートナーに迎えて、今度は悲願の金メダル獲得を目指す。
 予選で調子が上がらなかったところからの大逆転で劇的な優勝を飾った男子バレーは、19年のW杯優勝の勢いを継続して2大会連続の金メダルを狙いたいところ。
 逆に、前回大会で準々決勝敗退して五輪3連覇を逃した女子は、今回こそ復活の金メダルを狙いたいところ。だが、ナターリアが負傷明けの上、チームを牽引してきたタイーザが不出場のところをどう凌ぐかがカギを握る。

その他の注目選手

ボクシングのベアトリス・フェレイラ選手

 この他にも、まだまだ注目選手はいる。
 女子のボクシング60キロ級には現在、世界ランキング1位のベアトリス・フェレイラがいる。実力通りに力が発揮できれば金メダルの可能性は十分にある。
 また、ブラジル選手のイメージがあまりなかった韓国の格闘技テコンドーでは、2019年の世界大会で銅メダルを獲得した女子67キロ級のミレーナ・チトネリがいる。勢いに乗ってメダル獲得といきたいところだ。
 そして、ここのところ毎回、「最年長選手」として参加している印象のある男子セーリングのロバート・シャイトは、48歳となった今年も五輪出場。これで1996年のアトランタ五輪から7大会連続の出場となる。過去に金2、銀2、銅1と五つのメダルを獲得しているが、2大会ぶり6個目のメダルを目指したいところだ。(陽)