連邦政府がインド製コロナワクチン「コバクシン」を、当初提示されていた価格の1千%増(10倍強)の値段で購入していた事実が浮上。下院の連邦政府リーダーのリカルド・バロス下議(進歩党・PP)に不正関与の疑いが浮上している。22、23日付現地紙、サイトが報じている。
水増し価格でのワクチン購入は22日付エスタード紙の報道で明らかになった。それは、同紙が独自に入手した、インドのニューデリーにあるブラジル大使館が交わしたテレグラムの内容で判明した。
テレグラムによると、コバクシンの製造元のバラット・バイオテック社は、昨年8月のメッセージで単価100ルピー(1・34ドル)と知らせていた。12月にも「ビン詰めで売っている水よりも安い」とも書き記している。
だが、連邦政府は今年2月25日に、同ワクチンを1回分につき15ドルで2千万回分購入する契約を行った。この価格は、コバクシンの本来の単価の10倍以上となっている。
しかも、その15ドルという単価は、現在国内で流通しているコロナワクチンの中で最も高い。連邦政府は当時、すでに流通していた米国ファイザー製薬やスイスのヤンセン社のワクチンを単価10ドルで買える状態にあった。にも関わらず、そちらよりも、その頃はまだ治験の第3段階に過ぎず、国家衛生監督庁(ANVISA)の承認も得ていなかったコバクシンにそれだけの値段を払ったことになる。
しかも、この購入契約には「プレシーザ・メディカメントス」という企業が仲介して行われている。連邦政府による他のワクチン購買には民間企業は絡んでいない。プレシーザ社は、下院政府リーダーのリカルド・バロス下議がテメル政権で保健相をつとめていた頃に深い関わりを持っていた企業とされる。バロス氏は保健相時代、同社が経営に関わっているグローバル・サウーデ社に便宜を図った疑惑で捜査を受けている。
ブラジルでのコバクシン使用は3月からと想定されていたが、ANVISAは緊急使用を承認せず、6月に入ってからやっと限定仕様での「輸入」許可を出した。
エスタード紙の報道を受け、連邦検察庁は「捜査の必要がある」との見解を表明。上院のコロナ禍議会調査委員会(CPI)も、23日に早速この問題にとりかかっている。また、連邦会計検査院(TCU)も捜査に乗り出す意向だ。
プレシーザ社は22日「連邦政府は先払いで1億回分を払っているから、単価は2ドル」との声明を出した。だが、同社の共同経営者のフランシスコ・マクシミアノ氏は22日、「インドから帰ったばかりで自主隔離中だから、23日のCPIには出頭できない」と連絡している。
23日には、バロス下議が4月に、コバクシンの購買を可能にすることを目的とした議員手当を連邦政府から受けていたことが明らかとなった。バロス氏はこのとき、「コロナ対策のために何十億レアルもの支出が必要だ。ANVISAはまだ限られたワクチンしか認めていないが、連邦政府はすでに契約書に調印した」と、コバクシンの承認をせかす発言まで行っていた。
23日付フォーリャ紙は、ルイス・ミランダ下議(民主党・DEM)が、「私は3月20日に保健省で勤務する兄弟と共に大統領のところに行き、ワクチン購入でおかしな動きがあることを直接伝えた」と語ったことも報じた。同下議の兄弟は輸入部門の責任者で、3月31日に連邦検察庁で「保健省内でコバクシン購入契約に署名するよう、圧力をかけられた」と証言している。