ブラジル日本文化福祉協会(文協、石川レナト会長)は19日(土)午後8時、「国際日系人の日(Dia Internacional do Nikkei=DIN)」に合わせ、オンライン祝賀会「DIN21」を文協ユーチューブでライブ配信した。昨年に続き、「日系人の価値観を示す」をコンセプトに、パンデミックの難局にも焦点を当てた特別プログラムが実施された。協賛はTAKEUCHI CO.,LTD.、JPLAY DIGITAL、後援は在ブラジル日本国大使館、在サンパウロ日本国総領事館、nk2 brandingほか。
オンライン映像では「6月19日の国際日系人の日が、世界各国の約300万人の日系人への評価と団結を目的として、2018年にハワイのホノルルで開催された第59回海外日系人大会で制定された」との説明から始まった。
6月19日は、1868年にハワイに最初の日本移民〝元年者〟が到着した日だ。
続いて、石川レナト文協会長、田中克之海外日系人協会会長、桑名良輔サンパウロ総領事、山田彰駐ブラジル日本大使、野村アウレリオ・サンパウロ市議会議員が祝辞を述べた。
石川会長は東京オリンピックに合わせ、「ブラジルは、世界の様々な人種や文化が受け入れられ、統合されてきた国。日本も例外ではなく、象徴的な文化の一つが柔道。オリンピックでブラジルが獲得するメダルは柔道が多く、それは日本人移民の先生方の努力のたまもの」と述べた。
文協の「日伯懸け橋プロジェクト」の「ジェネレーション・プロジェクト」が中心となって組織された同イベントは、パンデミックに入ってから日系の人々がどのように困難を克服して来たかや、日系人としての生き方、価値観を実践している人の体験談などが紹介された。
出演者の一人、サンパウロ南部で8年前からレストラン『スクアロス』を営業している玉城ジルベルトさんは、パンデミックに入るまではビジネスも好調だったが、外出自粛令が出され、事態は急変した。最初の10日間は、家族で顔を見合わせる度に「どうしよう」という言葉しか出ず、借金が増えるばかりだった。
しかしある日、メディアでレストランの事情が報道されてから、多くの人から注文が入り、連絡していなかった友人たちの間でも支援の輪が広げられ、デリバリーを開始することで徐々に事態は好転していった。「実父も亡くなり、家族間には険悪なムードが漂い始めていました。それでも、結果的には、家族の絆と周囲の支援に救われました」と感謝する。
力行会で渡伯してタウバテで農業をしていた木村タケオさん(90、岡山県出身)夫妻は、今は子ども8人と多くの孫に囲まれ、ひっそりと余生を送ることもできる。
しかし、「ブラジルから受けた恩を少しでも返したい」と感謝の気持ちを原動力に、セアラ州の発展の遅れた地域の開発に、あえて再転住してイチジクを栽培することに決めた。今も厳しい気候や害虫の問題などと日々格闘が続く。
だがブラジルに来る前、日本力行会会長から「コーヒーを植えて儲ける事だけを考えず、人を作ることを考え、ブラジル社会に貢献するように」と言われた言葉を胸に、ブラジルの発展を夢見て働き続ける。
オンライン祝賀会「DIN21」は、https://www.youtube.com/watch?v=WyLA0BQ2xM0で視聴できる。
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文協主催のオンライン祝賀会「DIN21」は、すべてポルトガル語のみ。視聴した複数の日本人移住者から「せっかくブラジルや海外の日系人について学べる機会と思って楽しみに拝聴したのですが、日本語の字幕やユーチューブの自動翻訳字幕も設定されておらず、意味がほとんど分からなくて残念だった」とクレームの声が挙げられている。昨年から盛んになった日系社会のオンラインイベントは、総じてポルトガル語のみ。ネット時代だからこそ、日本と切り離せない日系社会のイベントは、日本の日本人が聞いても分かるだけの日本語による情報伝達も必要であり、その解決は喫緊の課題では。