先週末、ブラジル国内は4月にインド起源のコロナウイルスの変異株「デルタ株」での死者が出ていたことが明らかにされ、国内の医療専門家を不安にさせていたが、29日には2人目の死者も確認された。28日付現地紙などが報じている。
インドで猛威をふるい、従来のウイルスの1・8倍の感染力を持つとされるデルタ株はかねてから、国内での感染拡大が恐れられていた。ブラジル保健省は26日、4月18日にパラナ州で死亡した42歳の妊婦がこの変異株に感染していたことが確認されたと報告した。この妊婦は4月5日に日本から帰国。その時は陰性だったが、2日後に発症。8日後には入院し、帝王切開で出産したが、18日に亡くなった。この女性は日本に滞在中、または帰国する最中に感染した疑いが持たれている。
この女性は発症当日に親族の訪問を受けている。その親族は、同州初のデルタ株感染者と報告された71歳の女性の孫で、71歳の女性も、女性から感染した孫を介して感染した可能性がある。この女性は重症化して入院もしたが、回復した。この女性の家族からは複数の感染者が出ているが、どの株に感染していたかは確認されていない。
保健相は28日にも、5月末にマラニョン州のサンルイスに到着した中国企業「山東大智有限公司」の貨物船の乗組員の一人で、デルタ株に感染して加療中だったインド人の船員(54)が24日に亡くなったと発表した。
保健省によると、28日の時点で国内で発見、報告されているデルタ株の感染者は11人で、カンポス・ドス・ゴイタカゼス(リオ州)、ジュイス・デ・フォラ(ミナス・ジェライス州)、アプカラーナ(パラナ州)などで発見されている。
国内で英国アストラゼネカ社のワクチンの窓口となっているオズワルド・クルス財団(Fiocruz)は29日、デルタ株に関し「再感染を誘発しやすく、注意が必要だ」と警鐘を鳴らしている。
デルタ株に関しては、ブラジル国内で流通しているワクチンでは、アストラゼネカ社、米国ファイザー社が「効用がある」との研究結果を発表している。国内での緊急使用許可は下りていないものの、限定的な輸入がはじまったロシア製のスプートニクVについては、「90%の抑止能力がある」と29日に報じられている。
だが、報道によっては「1回の接種では弱く、2回の接種でないと効果がない」などともいわれている。アストラゼネカやファイザーは2回目までの接種間隔が長いことで不安もある。
ブラジルではコロナ死者数の週間平均が1600人台/日に減少したものの、死亡率は依然高い。また、サンパウロ州などでも現在、40代が1回目のワクチン接種をはじめている段階で、一部で不安が広がっている。