6月30日、右派、左派、中道派の枠を超えた超党派46人の署名を添えたボルソナロ大統領に対する大型罷免請求が下院議長に提出された。1日付現地紙が報じている。
「スーペルペジード(大型請求)」と呼ばれるこの罷免請求は、これまでに下院議長に提出された123通の罷免請求を総合した形のものだ。この123通という数字も歴代の大統領に出されたものの中で最多。
スーペルペジードには46人が署名を行っている。署名者は、ブラジル民主司法協会(ABJD)のような司法関係者から、中央労組(CUT)などの労組、先住民や黒人、LGBTなどの諸団体の関係者まで幅広い。
また、政界からも、グレイシ・ホフマン(労働者党・PT)、カルロス・ルピ(民主労働党・PDT)、カルロス・シケイラ(ブラジル社会党・PSB)といった左派政党の党首や、ジョイセ・ハッセルマン下議(社会自由党・PSL)やアレッシャンドレ・フロッタ下議(民主社会党・PSDB)といった、かつてのボルソナロ氏の支援者までを含んでいる。
今回の罷免請求には大統領が犯したとする23の罪状が書かれているが、その中には、反連邦議会、反最高裁のデモに大統領自身が参加したことや、自身の息子たちをかくまうために連邦警察のトップを変えようとしたこと、そして、先月後半に浮上したばかりのインドのコロナワクチン「コバクシン」の不正契約疑惑を認識していながら黙認したことまでが含まれている。
スーペルペジード提出の瞬間には、関わった人たちの大半が参加した記者会見も行われた。キム・カタギリ下議(民主党・DEM)は、「これは歴史的な瞬間だ」として、これほど大規模な罷免請求を提出したことに喜びの声をあげた。ジョイセ下議は、「かつて、あの大統領のもとで政府リーダーを務めていたことを恥じる」と言い、大統領を「オグロ(醜い妖怪)」と罵った。
ただし、アルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)は今回の大型請求に対してもこれまでの姿勢を変えず、受け付けない意向を示している。「罷免に必要なのは言葉ではなく、内容だ。コロナ禍議員調査委員会の結果を見てから判断する」と同議長は語っている。
ボルソナロ大統領はコバクシン疑惑以来、PPをはじめとしたセントロン政党との結びつきを強めようとしているが、社会民主党(PSD)のように、支持離脱をほのめかす政党も出てきている。
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