「ああ、つまりはそういうことだったのか」。5日に報じられた、ボルソナロ大統領の元義妹、アンドレア・シケイラ・ヴァーレ氏の暴露証言を聞いて、コラム子には腑に落ちるものがあった。
2018年初頭、ボルソナロ氏は大統領選の世論調査で10%台の前半の支持を獲得するほど注目度は高くなっていた。だが、まだニュース番組でとりあげられるほどの政治家ではなかった。
まだ支持者が「汚職に関係ないクリーンな政治家」を求めていたその頃、ボルソナロ一家に初めてのスキャンダルが浮上した。
それはボルソナロ氏本人をはじめとして、息子たちの資産が直前の数年間で急激に増えたことを伝えるものだった。とりわけ多かったのは不動産で、それらが議員としての給与でまかなえるものではなかったことで怪しまれていた。ただ、そのときは、その購買を可能にする資金の出所がわからなかったために、その後、そうした報道は尻すぼみになっていった。
だが、ボルソナロ氏の大統領当選が決まり、就任を1カ月後に控えた18年12月、長男フラヴィオ氏のリオ州議時代におこなったラシャジーニャ(議員職員給与のピンはね)疑惑が発覚した。
自身の雇った幽霊職員たちの給与の大半が現金で引き落とされて、父ボルソナロ氏の古くからの友人であるファブリシオ・ケイロス氏の口座にまとめて振り込まれていたことが判明したのだ。
これ以降、2年半余り経つが、リオの検察局、連邦警察による捜査で疑惑はさらに深まり、ケイロス氏も逮捕。父や弟たちがほかの言動で騒がれていたこともあったが、「ボルソナロ家における汚職」のイメージはフラヴィオ氏に一点集中していた印象があった。
だが、コラム子には、そのラシャジーニャ疑惑に関して疑問があった。それは、幽霊職員の大半が、ケイロス氏の親類と、ボルソナロ氏の2番目の妻のアナ・クリスチーナ氏の親類だったことだ。フラヴィオ氏が自分の父親の関係者をまとめて雇っていることが不自然に思えたからだ。
だが、今回のアンドレア氏の発言の「自分の兄弟は給料の中から、決められた金額より少ない額しか払わなかったから、ジャイールに首にされた」「自分はケイロス氏でなく、(大統領の親友だった)叔父に給料をキックバックしていた」の発言で、3年前から自分の中にあった疑問が晴れた気がした。
アンドレア氏の証言が仮に正しいと判断するならば、ラシャジーニャが父ボルソナロ氏も含めて行われていたものであり、それがゆえに彼の軍人時代の知り合いの一家が息子の幽霊職員となるのは納得がいく。
この謎の真相が明らかになるのは、いつのことか分からない。だが、ボルソナロ氏とすれば、この疑惑をまるごと闇に葬り去りたいのが本音だろう。(陽)