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サンパウロ州=6割が基礎的試験に不合格=医学部卒業生の知識を検査=「意味がない」と批判の声も

ニッケイ新聞 2014年1月29日

サンパウロ州地方医療審議会(Cremesp)が昨年11月、医師として働くための必要最低限の知識を問う試験を実施し、州内で最近医学部を卒業した学生が受験したが、その59・2%が同審議会の基準を満たさなかったと23日付エスタード紙が報じた。

受験者2843人のうち1684人が、120の設問のうち72問以上で誤答して不合格となった。例えば「長い間咳が続いた場合には結核を疑うべきか」という設問には、64%の受験者が答えられなかった。

この惨憺たる結果を受け、試験コーディネーターを務めたブラウリオ・ルナ・フィーリョ氏は「愚かしい。審議会としては、基準に満たなかった学生は再び学校で学び直してほしい」と憤る。

審議会によれば、選択肢から選ぶ設問のうち、70%が初級あるいは中級レベルだったという。試験の目的は「卒業したばかりの医学生が履修を終えた時点で基礎レベル、医師として働くにあたって必要最低限の知識を身に付けているかどうかを知るもの」だ。

不合格者の割合は2012年の数字から4・7ポイントも上がった。約60%が不合格という数字は、過去5年で最悪のものだ。

今回は9回目の実施。2012年以降、同審議会に登録し、州内で医師として働くには受験が義務となった。ただし登録は、試験の結果には関係なく行われる。

特に成績が芳しくなかったのは、私大の医学部卒業生だ。受験者2843人のうち私大卒業生は1942人で、このうち71%が不合格だった。一方、公立大医学部卒業生の不合格率は33・9%だった。

大学の各学部の管理や開設許可を行う教育省は書面でコメントを出し、「医師の養成機関の質改善は優先すべきこと。過去2年で様々な対策を講じている」とし、例として医師派遣政策マイス・メジコス、医学部への監査の強化などを挙げた。

また、州外で医学部を卒業した有志485人もこの試験を受けたが、このうち72・2%(350人)が不合格という結果に終わった。

なお、この試験に関しては開始以来賛否両論がある。USP予防医学学部教員のマリオ・シェッフェル氏は「設問は主な医学の分野を幅広く網羅し、科学文献や他国の試験を参考にしている。実施しているのが学校ではないことも利点」と賛同する一方、サンパウロ連邦大学のアントニオ・カルロス・ロペス医学部長は「何の意味も成さない試験。合格してもしなくても登録されるので受験者は結果を気にしていないし、結果が悪くても学校に改善命令が出ることもない。それに医師として働くための知識を図るには理論だけでなく、実務の試験も必要」と指摘する。

この試験に関しては連邦医療審議会(CFM)や他州の審議会も否定的だが、Cremespは国内で働く医師であれば国籍を問わない、統一の試験に変えたいと考えているという。