「日系社会の一つの宝だと思います」――初め国士舘大学スポーツセンターに足を運んだ桑名良輔在聖総領事は、施設の広さと美しさにそんな詠嘆の声をあげた。敷地は約400本の桜が咲き、沖縄種の少し濃い桃色の花が久しぶりの訪問者を出迎えた。ブラジル日本文化福祉協会(石川レナト会長)は聖州サンロッケ市の同センターで「第24回桜まつり」(水本セルソ実行委員長)をドライブスルー形式で2日から11日まで開催した。期間内に来場者数は車で1500台、人数はおよそ5千人が来場したという。水本実行委委員長は「予想の倍から3倍の方が来場して頂き、大変助かりました」と盛況振りを喜んだ。
昨年パンデミックで同祭を延期して以来、休園が続いていた。例年は3万人が足を運ぶ大イベントだが、今年はドライブスルー形式となった。4日には少人数での開祭式が原沢和夫パビリオンで執り行われ、出席した桑名総領事や石川会長をニッパク紙が取材した。
桑名総領事は「お花見の習慣は外国でも広がりつつありますが、日系ブラジル社会でもこの習慣を守り続けて来た事を喜ばしく思います」と笑み、維持管理に努めた文協に賛辞を贈った。
青年文協(ラファエル・ペターセン部長)等の若者達が会場設営のために、同センターで寝泊りをしたと聞き「彼等の力と活力には感銘を受けています」と積極的な参加姿勢を称えた。
石川会長はニッパク紙の取材で「ペターセン部長率いる文協青年は、全て慎重に計画し、素晴らしい仕事をしてくれています」と若者の活躍を強調した。「今まで若者達の自発性を促しつつ常に行動を共にしてきました。必要な時に支えテくれると感じて貰う事が重要だと思ったからです。素晴らしい形で応えてくれました」と活躍ぶりにに目を細めた。
「若者の積極的な参加は、日本文化の灯を絶やさない為に日々活動する私達にとって大きな励み。この火を絶やさず、ブラジル社会に広めていかなければなりません」と襟を正した。
文協もコロナ禍による財政危機を克服するため、日本国外務省やJICAなど多数の支援を受けた事を説明し、深謝の言葉を述べ、日本文化の継承と普及を誓った。
桑名総領事は体育館の横へ移動し、石川会長と共に桜の植樹を行った。「2022年にここに居る皆さんとまた参加しましょう」と声を掛け合い、和やかな雰囲気の中で解散となった。石川会長は「来年はコロナ禍が終息して、再び大規模に開催ができる事を願っています。こんなに広々とした場所には活気が必要です」と希望を託した。
さくら祭り=竹製大作オブジェのサプライズ=複数の流派が合同で手がける
2日から11日まで開催された国士舘スポーツセンターの第24回桜まつり。400本もの桜のほかに、敷地内の池に竹の巨大オブジェが設置され訪問者を圧倒した。
作品名は「Reflexos」。約200本の竹を用いた、全長30メートルの大作だ。6月26日、27日頃に草月流の師範ヤマグチ・キヨシさんを招き、池坊華道家元池坊南米支部や山月流、松月堂古流、草月流等から25人が集い協力して作り上げた。
流派の垣根を超えてひとつの華道作品を手がけるのは大変珍しい。文協いけばな委員会委員長でもある外塚クリスチーナブラジルいけ花協会会長は、「材料費や輸送費、解体や廃棄費のコストの面からもこのような大きな作品は非常に珍しいです」と文協広報サイトで説明している。
外塚会長が属する草月流は竹を用いた大規模な造形作品を手がける伝統を持つ流派だという。約3日かかって組み立てた作品は、池に作品を作る際の筏を足場として設置するなど大掛かりなものとなっている。
「桑名良輔総領事も大変感動されていた様子でした」と水本セルソ実行委員長は満足気に笑みをこぼした。