村崎道徳さん(みちのり、90歳、二世)が2014年8月に日伯叢書出版社から刊行した『血胤の声を聞け』が、この6月にキンドル版(電子出版、https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/B097D8T1H3/japanontheg01-22/)として再刊された。「血胤」とは「血をひいた子孫」のこと。
村崎さんは聖州ミランドポリス出身。幼少の頃から母タツエの薫陶を受け、日本語の読み書きを習う一方、教育勅語を勉強し、日本人としてのあり方を強く意識しながら育った。90年代に7年間日本で就労、その後にブラジル日本都道府県人会連合会が管理するイビラプエラ公園の開拓先没者慰霊碑の清掃を長年手掛けてきた。
あとがきには《終戦、そして日本から聞こえてくるのは、がらりと変わった日本人の価値観、思想の変化、新しい教育は民主主義でなければと、鳴り物入りでの宣伝でした。しかし、私達がここブラジルで育ち、日本的に欧米白人と交わって生活していて、改めて日系人の生き方を民主主義に変えねばならないという必要も、また欠点も無かった訳で、戦前の祖父母の教えは民主主義そのものであり、変えねばならない所は何一つ見えない。
それどころか彼ら西洋人の個人主義民主主義の生活行動よりも、手本になるところが多々有って、人道的で和を尊ぶ日本の修身教育の精神こそ純粋な民主主義の教えであると私は理解していました》ととある。
そのような戦前の二世らしい気持ちをもって日本で就労をした結果、多くの違和感を味わった。その経験を元に現代日本に対する熱い想いを綴った著作だ。
アンリミテッド会員には無料、一般には99円。日系社会で最初に出版された本が、日本のアマゾン・キンドル版に入るのはごく珍しい。