バルテル・ブラガ・ネット国防相が、大統領が希望する新投票方式を導入しないと来年の選挙は行わないとアルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)に脅しをかけていた疑惑が表面化したことで、22日以降、三権内で軍の影響力を抑制しようとする動きが生じつつある。軍は今月上旬も、上院のコロナ禍の議会調査委員会(CPI)で軍人の汚職疑惑関与が浮上した際、CPIに威嚇的な言動を行い、問題となったばかりだった。
ボルソナロ大統領が求める「投票結果の印刷付投票(ヴォト・インプレッソ)」を導入するようリラ議長を脅したとの疑惑が22日付エスタード紙で報じられた。その後、ブラガ国防相はすぐに疑惑を否定し、「憲法の定める範囲内での行動」を約束。選挙の投票方式に関しても、「より透明性の高いものを求めているだけだ」と主張した。
だが、三権内ではすでに、ブラガ国防相のこの行為を契機に、軍の発言力を弱めようとする動きが起こっている。下院ではすでに民主社会党(PSDB)、民主党(DEM)、社会民主党(PSD)、民主運動(MDB)、連帯(SD)といった政党がヴォト・インプレッソに関する法案を議会が再開する8月早々に廃案に持ち込もうとする動きを起こしている。
さらに、アレッシャンドレ・フロッタ下議(PSDB)が捜査願いを最高裁に提出。労働者党(PT)の下議たちも同様に、威嚇罪の適用を求めた訴えを起こしている。
ジルマール・メンデス、エジソン・ファキンといった最高裁判事が、証拠も出さずに投票方式の変更を主張し続けるボルソナロ大統領や、その片棒を担ぐ形で議会に圧力をかけようとしたブラガ国防相の行動を強く批判。ロドリゴ・パシェコ上院議長やマルセロ・ラモス下院副議長らからも批判の声が続出している。
こうした抗議的な行動のみならず、連邦政府内でも軍部の閣僚数減少の可能性が囁かれはじめている。連邦政府は来週早々にもPP党首のシロ・ノゲイラ氏を官房長官に任命する意向だが、それに伴い、連邦政府内のセントロン色が強まることが予想されている。
一部では、ルイス・エドゥアルド・ラモス官房長官の大統領府総務室長官への配置換えがその最初と見る声もある。ボルソナロ大統領自身も、かつての選挙キャンペーンでの「あそこ(セントロン)には泥棒しかいない」との発言から一転し、22日には「私はセントロンだ」などという発言までしはじめていることから、そうした動きが有力視されている。
軍部の政治的行動に国民の反発が高まる例は、ブラガ国防相の今回の言動以外にも続いている。ひとつは4月22日にボルソナロ大統領がリオ市で行ったバイクデモ「モトシアッタ」に、現役軍人でもあるエドゥアルド・パズエロ前保健相が参加した件。もう一つは、7月8日にコロナワクチン不正疑惑に軍人出身の保健省役員の関与を揶揄したオマール・アジス委員長に対し、ブラガ国防相と三軍の長の連名で、「軍人批判を行い続けると厳しい対応を行う」との声明を出した件だ。
こうした経緯上、保健省ナンバー2だったエウシオ・フランコ氏をはじめとした軍人のコロナ禍CPIへの召喚の可能性も高まっているが、その召喚候補の中にはブラガ氏の名前も入っている。