最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事は4日、選挙高裁(TSE)の要請を受け入れ、ブラジルの選挙方式やこれまでの結果に対して虚報の拡散を止めないボルソナロ大統領を、フェイクニュース捜査の対象のひとりに加えることを決めた。また、企業や司法、宗教団体までが民主主義的の維持と選挙の実施を求め、ボルソナロ大統領の意向に反対する声明も出し始めている。5日付現地紙などが報じている。
モラエス判事の決定は、2日にTSEの判事たちが満場一致で下した、「ボルソナロ大統領が選挙に関する虚報を拡散している件についての捜査開始を求める」という判断に応えたものだ。
ボルソナロ大統領は2018年の大統領選の頃から、証拠もなく、「自分は一次投票で勝利していた」と主張。さらに、2014年の大統領選でも、アエシオ・ネーヴェス氏がジウマ氏に勝利していたと言い張り、自身が求める「投票結果の印刷付きの電子投票(ヴォト・インプレッソ)」を導入しない限り、来年の選挙はやらせないと威嚇する言動を続けていた。
大統領は結局、7月29日に「不正の爆弾的証拠を発表する」と宣言したものの、有効な証拠は何も示せず、社会的反発を招いた。それにもかかわらず、大統領はなおも、選挙の不正と選挙高裁のルイス・ロベルト・バローゾ長官への攻撃、ヴォト・インプレッソ導入をとの主張を続けている。
この行動に対しては、政界だけでなく、宗教団体や企業主たちの間でまで、大統領に対する反発が強まりつつある。
4日、有志の人々により、「選挙は尊重されるべき(Eleicoes Serao Respeitados)」というマニフェストが発表された。このマニフェストは、従来通りの電子投票による選挙の実施を支持し、選挙結果は敬意をもって認証すべきと訴えるもので、発表に際しての賛同者のリストには、マガジン・ルイーザやナトゥーラ、オスクレン、BRFといった伯国を代表する企業の会長、社長クラスや最高裁元判事のネルソン・ジョビン氏、中銀元総裁のイアン・ゴルドファイン氏、経済学者のアルミニオ・フラガ氏、カトリック・サンパウロ州教区のオジロ大司教など、政財界や司法界の大物たち200人以上が名前を連ねている。
また同じく4日、ブラジル弁護士会(OAB)やカトリックの国内最大の団体であるブラジル全国司教会議(CNBB)といった法曹団体や宗教団体が共同で、現行の電子投票での選挙を支持し、TSEのバローゾ長官を擁護する声明を出した。
55万人を超える人々が新型コロナの犠牲となっている中で、民主主義の砦である選挙の結果を疑い、その実施を妨げるような議論に多くの時間を割くような、憲法に反する言動を批判する声明には、人権団体や活動家らが参加するアルンス委員会やブラジル報道協会(ABI)、ブラジル科学協会(ABC)、ブラジル科学促進協会(SBPC)も参加している。
ヴォト・インプレッソに関しては、下院の特別委員会が、ボルソナロ派のフィリペ・バロス下議(社会自由党・PSL)を報告官として憲法補足法案(PEC)の審議を行っているが、下院、上院ともに反発が強く、PEC承認に必要な3分の2以上の賛成を得られる可能性はかなり低い。2022年の大統領選に同投票形式を導入するには、10月初旬までに同法案を成立させなければならない。
なお、最高裁によるフェイクニュース捜査の対象に含まれたことを知ったボルソナロ大統領は4日夜、PEC報告官のバロス下議と共にラジオ番組のインタビューに応じ、憲法の枠外で活動すると威嚇する発言を行うなど、火に油を注ぐ行為に出ている。