自身の熱心な支持者であるブラジル労働党(PTB)党首のロベルト・ジェフェルソン氏がネット上での攻撃的な言動で逮捕されたことなどを受け、ボルソナロ大統領が最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス、ルイス・ロベルト・バローゾの2判事の罷免請求を上院に対して行うことを表明した。ジェフェルソン氏逮捕は大統領支持派を動揺させ、過激な言動が相次いでいるが、連邦議会ではそれに対して冷ややかな反応が続いている。14、15日付現地サイトが報じている。
14日朝、ボルソナロ大統領は、モラエス、バロス両判事に対し、「憲法の権限を踏み越えた」とツイッター上で支持者たちに語りかけ、「週明けにも上院に2人に対する罷免請求を出そうと思っている」と語った。
事の発端は13日、モラエス判事が管轄する「デジタル・ミリシア(ネット犯罪者)捜査」において、13の罪状を問われていたジェフェルソン氏が逮捕されたことにあった。ジェフェルソン氏は以前から、銃を抱えるポーズをとって最高裁を威嚇したり、在伯中国大使などに対して人種差別的表現を使ったりするなどして物議を醸していた。
ジェフェルソン氏逮捕は、大統領支持派に強い動揺を与えている。そのうちのひとりが、連邦政府が支持者たちをネット上で指揮し、フェイクニュースの拡散なども行う「憎悪部隊」のリーダー的な存在と見られている大統領次男のカルロス氏だ。同氏はジェフェルソン氏の逮捕を、「政治的だ」として批判しながらも、「次は自分かもしれない」と警戒している。
これ以前には、今年の2月に大統領派のダニエル・シルヴェイラ下議が最高裁判事の全員交代などを宣言する動画を拡散し、現行犯逮捕。収監は今日も継続している。
バローゾ判事は選挙高裁の長官で、ネット犯罪捜査とは直接関係ないが、大統領とは「印刷付き投票」(ヴォト・インプレッソ)の導入をめぐって対立中だ。大統領はヴォト・インプレッソを下院で却下されたのに加え、「過去の選挙で不正があった」と虚報を拡散し続けていることで、選挙高裁の訴えに基づき、ネット犯罪捜査の対象に加えられている。
だが、ロドリゴ・パシェコ上院議長が罷免請求を進める可能性はほとんどないと予想されている。また、大統領三男のエドゥアルド下議がヴォト・インプレッソ不採用を不服として、選挙高裁に対する議会調査委員会の設置を求めているが、署名が集まらないなど、議員たちの支持を得ていない。
他方、ボルソナロ氏支持で有名なセルタネージャの大御所歌手、セルジオ・レイスは14日、最高裁への抗議行動として、トラック運転手の組合に対し、9月7日の独立記念日にデモを起こすよう訴えたが、組合側に否定されている。また、大統領支持者たちがワッツアップ内で9月7日に中国大使館を襲撃する計画を立てていることも明らかになっている。それは、中国大使のワン・ヤンミン氏がジェフェルソン氏の逮捕を喜ぶ発言を行ったためだ。
なお、カルメン・ルシア最高裁判事は16日、ボルソナロ氏による電子投票への批判、攻撃は深刻な問題として、24時間以内に意見書を提出するよう連邦検察庁に求めた。同判事は3日にも同件に関する意見書提出を求めているが、返答がないため、再度の要請を行った。