ここのところ、ボルソナロ大統領、ならびに支持者や軍人閣僚たちが「軍のイメージによる威嚇」によって、連邦議会や裁判所、さらに国民の考えを必死に変えたがっているように見えるが、うまくいっていない。少なくともコラム子にはそのように映る。
事の発端は、大統領が来年の選挙に導入したがっている「印刷付き投票」(ヴォト・インプレッソ)が思った以上に支持を得られず、法案却下の危機にさらされそうになったことだった。
この投票方式に変えることによって、よほど選挙に勝つ自信があったのか、ボルソナロ氏はあらゆる手を尽くして通したがった。だが、それが次第にエスカレートして、軍の強圧的なイメージを使って非民主的とも言える威嚇行為へとつながっていった。
そのピークが10日、ヴォト・インプレッソの下院本会議での投票日の午前、三権広場の前で行われた軍事行進だった。大統領としては、これで軍の威信を見せつけることにより、下院に対して圧力をかけたかったようだ。
結局のところ、これはある程度は効いたようで、投票の際、かなりの数の女性議員がヴォト・インプレッソ賛成の票を投じていた。だが、それでも承認に必要な票数を80票近く下回る惨敗に終わった。
だが、投票以上にダメージだったのは国民に対してのイメージだった。行進が発表された9日の時点では国民やメディアも緊張感を持ってこれを待っていた。だが、いざ行進がはじまってみると、黒煙をあげて軍の怖さをアピールした戦車がたった一台という有様…。
これに拍子抜けした国民たちはこれをネタに大笑いし、ネット上では「なんだ、その煙を使ってデング熱対策で蚊でも殺すのか」「理想は戦車でしきつめた状態だったのだろうがたった一台とは」といった意味の冗談画像を次々と掲載した。
そんな「こけおどし」的な状況はなおも続いた。大統領派のセルタネージャの大物歌手セルジオ・レイスは9月7日の独立記念日にトラック運転手組合によるデモを提唱した。だが、それは大不評で批判が殺到。レイス本人が泣いて謝罪をする事態となった。
また、熱烈なボルソナロ大統領派として知られるブラジル労働党党首のロベルト・ジェフェルソン氏は銃を持って最高裁を威嚇するなどの行為を続けた結果、14日に逮捕。その途端に勢いをなくし「刑務所は健康に悪いので自宅軟禁に切り替えてほしい」とすがる有様だ。
軍人閣僚らも、軍政を否定したり、軍事介入を合憲だと発言しては、ネットで袋叩きにあっている。「軍政復活の恐怖心」で伯国民を抑え込むのは、大統領関係者たちが思っているほどには楽ではなさそうだ。(陽)