「コロナ対策が遅れた国ほど、社会や経済活動が停滞し、より多くの支出を迫られた」という研究結果がブラジルで発表された。19日付エスタード紙が報じている。
この研究結果は応用経済調査院(Ipea)が明らかにしたものだ。同院によると、コロナ対策が上手くいかず、多くの死者を出した国は、その代償として、多額の緊急対策費を支出する必要に迫られることになったという。
ブラジルの場合、2020年の国内総生産(GDP)は、予想を下回る4・1%減に止まりはした。だがそれは、緊急追加予算として5240億レアルを注ぎ込んだ結果で、国が抱える負債増額という代償を伴った。
Ipeaの調査は、コロナ対策の是非を「人口100万人あたりの死者数(死亡率)」ではかり、パンデミック前に期待されていたGDPの伸びと実際に達成できたGDPの成長率の差(喪失率)と、コロナ対策として組んだ財政措置がGDPに占める割合を比較したものだ。
Ipeaが比較対照したのは、英国やイタリア、米国など計30カ国。今年の3月3日現在の死亡率を基にワースト15カ国を並べると、死亡率の高い国はGDP喪失率と財政措置がGDPに占める割合が高いことが明らかになった。
3月3日現在のブラジルの死亡率はワースト7位の1210人/100万人で、昨年のGDP喪失率は6・1%だった(パンデミック前の予想値を6・1%ポイント下回った)。また、緊急支援金などの財政措置で注入した額はGDPの14・5%で、先進国並みの高さだった。
他の国も見てみると、死亡率がワーストの1833人だったイギリスは、GDP喪失率が11・4%、追加注入額の割合は32・4%などの大打撃を受けている。死亡率2位(1632人)のイタリアも、GDP損失率が9・7%、追加注入の割合も42・3%ときわめて高くなっている。
今回の調査は、上院の独立税制監査院(IFI)のディレクターを務めたこともある同院調査員のロドリゴ・オライール氏が担当し、その結果は同院の社会政策報告書にも掲載された。
同氏によると、ブラジルは今年の予算に1270億レアルの特別予算を組んで追加注入を行っているが、今年の予算は昨年中にパンデミックが終わるという楽観的な予測の元に組まれたため、緊急支援金の支給額や支給対象が減るなど、貧困家庭や労働者に対する救済用の支出が抑えられている。また、他の国々が打ち出しているような、コロナ後の回復に向けた対策は打ち出されていない。
また、22年に関しても、選挙年であることで、ボウサ・ファミリア(アウリシオ・ブラジルと改名予定)や税制改革に伴う支出増が予想されるなど、不安要素が尽きないという。