20日、ボルソナロ大統領は上院に、最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事に対する罷免請求を提出した。この提出は連邦政府内でも反対されていたもので、最高裁の怒りを買った。また、上院が受け付けるかも疑問視されている。20、21日付現地紙、サイトが報じている。
ボルソナロ大統領がモラエス判事の罷免請求を提出したのは20日の夜のことだった。ボルソナロ氏は、大統領の熱心な支持者である、セルタネージャ歌手のセルジオ・レイス氏とオトニ・デ・パウラ下議(キリスト教社会党・PSC)らに対する「デジタル・ミリシア(ネット犯罪者)」の捜査が行われた19日に、同判事らへの罷免請求を提出する意向を表明していた。
「デジタル・ミリシア」への捜査令状を出したのは、フェイクニュース関連の捜査を担当しているモラエス判事だ。19日の捜査対象者は10人だったが、レイス氏は特に、ワッツアップを通じて最高裁前にキャンプを張っての威嚇や最高裁判事全員の更迭などを訴え、社会問題となっていた。
大統領は14日も、自身の熱心な支持者であるブラジル労働党(PTB)党首のロベルト・ジェフェルソン氏が銃を持った写真をSNSに掲載して最高裁を威嚇したことなど、13の罪状で逮捕された後、モラエス判事、そしてかねてから選挙方式をめぐって対立していた、選挙高裁長官でもあるルイス・ロベルト・バローゾ判事の罷免請求を出すことをほのめかしていた。
大統領の言動で三権の協調性崩壊の可能性が高まっていることなどから、連邦政府内の閣僚や側近たちは罷免請求の提出に反対していた。だが大統領は制止を振り切り、提出に踏み切った。
20日に提出された罷免請求はモラエス判事に対するもので、大統領はその理由として、「政党的な偏りがあり、憲法上の限界を踏み越えた責任法違反行為」を主張した。罷免請求への署名は、大統領と国家総弁護庁(AGU)のブルーノ・ブランコ長官が行った。
この罷免請求はまず、最高裁を激怒させた。最高裁はこれに対し、「民主国家の判事は合法的な手順に従って判断を下しており、不満がある場合は上訴するための手続きも定められている。一人の判事が自らの下した判断によって告発されることは法規上も認められない」「全ての機関が民主主義の健全性を維持する方法を模索している中、大法廷も承認した件での捜査を理由とする大統領の訴えを棄却する」との表現で大統領を強く批判すると共に、モラエス判事の判断を信頼する姿勢を示した。
最高裁に対しては10政党が連名で連帯を示す声明を発表している。それらの政党には労働者党(PT)、民主社会党(PSDB)、民主運動(MDB)、民主党(DEM)などの大型政党が名を連ねている。
一般的な審理では第3審を担当する高等裁判所(STJ)も、モラエス判事に対する罷免請求に懸念を示す声明を行っている。
一方、ロドリゴ・パシェコ上院議長はモラエス判事の罷免請求に対し、「読んで検討する」と答えたものの、「事前の見解では国を揺るがすような犯罪性を感じない」と審理開始には消極的だ。この件に関しては、アミウトン・モウロン副大統領も以前から、「上院が受け付けるとは思えない」と発言している。
この罷免請求提出により、ボルソナロ大統領が最高裁に推薦しているアンドレ・メンドンサ氏の承認が絶望的になっている。上院のダヴィ・アルコルンブレ憲政委員会(CCJ)委員長は罷免請求提出後、「メンドンサ氏を口頭試問(サバチーナ)にかけることはないだろう」と厳しい発言を行っている。
23日には、現状を重く見た知事たちが緊急の会合を開き、三権間の緊張を緩和するため、ボルソナロ大統領との会合を申し入れると共に、三権の長たちに書面を送ることを決めた。この日の緊急会合には、24州と連邦直轄区の計25人の知事が参加した。