ボルソナロ大統領長男のフラヴィオ上議が、ブラジルはおろか米国でも使用許可のおりていない米国製コロナワクチンの契約交渉に関与していた疑惑が浮上している。27日付現地サイトが報じている。
この疑惑は26日夜、雑誌「イストエ」サイトが音声資料と共に報道して大きな話題となった。同誌がスクープした内容によると、フラヴィオ氏は6月9日の15時37分に、バイア州イタカレーに拠点を置く弁護士で企業家のステルヴィオ・ブルニー・ロジ氏から米国製コロナワクチン「ヴァクシニティ」の契約交渉の席に同席を求めるメールを受け取っていた。
「ヴァクシニティ」というワクチンは、ダラスに本社を置く同名の製薬会社の商品だ。国家衛生監督庁(ANVISA)でブラジル用のワクチンとして申請される以前に、米国内でも治験段階にすぎない品物だ。
ところが同社は3月からANVISAに働きかけ、ブラジルでの緊急使用許可を求めていた。ステルヴィオ氏は5月31日にマルセロ・ケイロガ保健相にも交渉を希望するメールを送ったほか、保健省の上層部にもメールを送り続けていた。
フラヴィオ氏へのメールにはステルヴィオ氏が、「私はあなたがワシントンDCで開かれた懇親会で、ヴァクシニティ社のワクチンについての話が出たときに一緒にいた者だ」と名乗り、「あなたが米国にいる今日、明日中に、ヴァクシニティ社の担当者との会議を行いたいが、同席願えないか」と綴られていた。
フラヴィオ氏は6月7日から10日の日程で、ファビオ・ファリア通信相と共に5Gのインターネット網に関する視察のために米国におり、ワシントンDCやニューヨークを訪問していた。
ステルヴィオ氏はイストエの取材に対し、相手の注意を引こうとして、タイトルなどを考えてメールを送ったとしつつ、「フラヴィオ上議とは実際に会ったことはなく、同氏のSNSに乗っているアドレスにメールを送っただけだった」とし、面識がないことを強調した。
だが、そのような人物がなぜフラヴィオ氏がワシントンDCに立ち寄ったことを知っていたかで疑問が残る。その上、フラヴィオ氏はメールを受けた翌日、なぜか側近に命じて、ステルヴィオ氏のメールを保健省上層部のロドリゴ・クルス氏に送らせている。それを受け、ステルヴィオ氏は5日後にクルス氏にメールを送っている。
ステルヴィオ氏はさらに、7月1日に保健省健康管理局長のアルナルド・コレイア・デ・メデイロス氏にメールを送っており、同月27日に送ったメールでは同局がヴァクシニティの件で協力してくれたことにたいする謝意を表明している。
イストエ誌は、ステルヴィオ氏がフラヴィオ氏にメールを送った際に、自分のメールアドレスから直接送るのではなく、リオ市在住の弁護士であるリカルド・オラシオ氏のものを使っていたことや、ステルヴィオ氏がリオに持つ病院関係の機器を扱う企業の「マルゲ・コメルシオ」に対し、フラヴィオ氏とのつながりが深い退役軍人でリオ州ロテリカ局元局長のジルベルト・ゲイロス氏がヴァクシニティの契約締結を匂わすメールを送っている疑惑なども報じている。「マルゲ・コメルシオ」は名目だけのペーパー・カンパニーで、登録された住所で営業している形跡はないと報じられている。