全国の殺人件数の減少とは対照的に、2019年には理由不明な暴力的な死で1万7千人もの命が奪われていたことや、殺人事件の被害者の76%が黒人であることなどがわかった。8月31日付現地サイトが報じている。
これは、ブラジル治安フォーラムが8月31日に発表した「アトラス・ダ・ヴィオレンシア(暴力地図)」という調査結果によって判明した。
同アトラスによると、2019年は「理由不明の暴力死」が、2018年の1万2310件から1万6648件へと35%増えたという。この数字には、暴行、殺人、事故、自殺といった理由が考えられるが、最終的な理由が確定できなかった死が統括されている。
この流れは殺人件数そのものの推移と逆行している。2018年には5万7956件だった殺人事件は、1995年以来最少となる4万5503件にと21%減少しているからだ。
この「理由不明の暴力死」の数が外的な力を受けた暴力死全体に占める割合も2019年は12%となり、09年以降でもっとも高かった。2011年から17年までは常に6~7%で、18年は8%だった。暴力死には、殺人、事故、暴行、自殺が含まれるが、その74%は殺人事件による被害者と推定されている。
同アトラスは、長期的なスパンで見た暴力死減少の理由を、ブラジル社会の高齢化と国や州単位の治安政策、武器を回収する非武装化の動きの結果としている。暴力死した人の大半は若者だという。また「理由不明の暴力死」増加の理由のひとつに麻薬密売人たちの抗争や武器を持つ人が増えたことをあげている。
一方、フォーラムは、黒人が殺害される比率が上がっていることに注意を促している。保健省の統計などによると、2009年から19年にかけての殺人事件をみると、非黒人の死亡率(100万人あたりの犠牲者の数)は30%減っているのに対し、黒人の死亡率は15%しか減っていないという。
そうしたこともあり、2019年は殺害被害者の76%が黒人となったという。非黒人より黒人の方が2・6倍も殺される確率が高かったことになる。
同アトラスでは、ボルソナロ政権となった2019年以降、警察による黒人への暴力が増えていることも明らかになった。
逆に、LGBTに対する殺害事件は、2018年の1685件から833件へと半減以上減ったこともわかった。
また、先住民が殺害される事件も増えており、100万人あたりの犠牲者の数は2009~19年の10年間で、15人から21・7人へと21・6%増えたという。