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《ブラジル》期待外れの投資比率の伸び=GDPのV字回復には程遠く=政治や水の危機が悪影響

GDPに占める投資の比率を示すグラフ(8日付エスタード紙の記事の一部)

 ブラジルの投資額が国内総生産(GDP)に占める比率は新興国や先進諸国のそれより低いが、現在の政治危機や水危機のため、当面は現在の水準維持か緩やかな伸びしか期待できないと8日付エスタード紙などが報じた。
 第2四半期の投資がGDPに占める比率は前期比で3・6%減の18・2%だった。この数字は昨年同期の15・1%より高いが、国際通貨基金(IMF)が公表した新興国の投資比率の平均32・9%や、先進諸国の平均22%と比べるとかなり低い。
 パウロ・ゲデス経済相は、ブラジルの経済は新型コロナのパンデミックで失墜したが、現在は投資増額による民間部門の業績回復により、V字型の回復を遂げているという。
 だが、市場関係者の見方はもっと厳しく、投資増は起きていても、景気の回復を加速するには不十分で、来年の経済成長は低率で終わるとの見方が出ている。ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)の経済指数算定部門の責任者のロドルフォ・トブレル氏も、このような見解を表明している専門家の一人だ。
 同氏によると、FGVが測定している今後12カ月間に投資する意欲に関する指数は、第3四半期に上昇する気配を見せているものの、サービス業110・9ポイント、建設業103・6ポイントで、パンデミック前の水準には戻っていない。工業は129・2ポイントで指数がより大きいが、第1四半期の132・8ポイントより低下した。

 ブラジルの投資比率上昇を妨げている最大要因は、失業率やインフレ率が高止まりしている事だ。6月以降は特に、水危機による電気代の値上がり、少雨や灌漑用水の不足による農産物の減産とそれに伴う食料品価格の値上がりが購買力の低下を招き、家庭消費を圧迫する傾向が強まっている。
 この事は、第2四半期のGDPが第1四半期を0・1%下回った事にも表れた。家庭消費が振るわない状態は、2014~16年のリセッションの時から続いている。
 サンパウロ州カトリック総合大学(PUC―SP)教授で連邦経済審議会(Cofecon)議長のアントニオ・コレア・デ・ラセルダ氏は、「投資を動かすのは需要の高まりと利益向上への期待だ」とし、ブラジルの需要の高まりは投資増額を招く状態にはないと明言した。
 第2四半期のGDPが前期比で縮小した後、市場関係者は今後のGDPの成長見通しを、今年は5%強伸びて昨年の損失分を埋め合わせるが、来年は1~2%程度と下方修正した。投資も、今年は最大9・5%程度伸びるが、来年は3・1%で終わると見ている。
 投資家らは、干ばつによる農産物減産が食料価格をさらに押し上げる事と共に、電力危機で工業生産などにも影響が出る事を案じている。
 また、インテルB社長のクラウジオ・フリスキタッキ氏は、ブラジルで活動中の企業は既存インフラを利用して活動する方向で投資、生産計画を立てているが、外国人投資家は選挙結果を見てインフラなどへの投資計画を立てるから、現在の政界の混乱や先行き不透明感は投資にも重大な影響をもたらすと見ている。