東京滞在中、50年前の同僚の家に俺は世話になった。友人は八王子に住んでいるので、昔懐かしの新宿駅で別の路線に乗り換えた。
複雑な駅構内を、間違えない様にブラジル式に俺のペースで歩いていると、俺のカッコいい歩き方と姿に興味を持ったのか、二人の上品な中年女性が、私を呼び止めた。
二人は「このパンフレットをゆっくり読んで連絡して下さい」と言って何かの勧誘のパンフレットを手渡してくれた。何となく嬉しい気持ちで友人の家にたどり着いた。
友人「何を大事に持っているんだ?」
俺「二人の優しそうな美人が俺に惚れて、これをくれたんだ。誘惑の手紙だろう」
友人「えっ、そりゃーないだろう。見せろよ…、何だこれ? 〝自殺は止めてください〟とか何とか書いてあるゾ」
ああ、50年遅れの俺は自殺希望者に見えるのかな。
畜生!
そういえば、サンパウロでも同じ様な経験談を聞いたのを思い出した。
久々に日本に行って、神田川の欄干で彼が懐かしく川を覗き込んでいると、突然二人の警察官に抱き抱える様に取り押さえられたそうだ。
「何するんだ! 何も悪い事はしてないじゃないか」と彼は必死で抵抗したそうだ。
ところが、警察は「飛び降り自殺は止めて下さい」だったそうだ。