22日、上院のコロナ禍議会調査委員会(CPI)で、ヒドロキシクロロキンなどの不正治験疑惑で揺れている大手医療保険会社「プレベンチ・セニオル」の最高経営責任者(diretor-executivo)による証言が行われた。この直前や証言中に、プレベンチが隠蔽していた死者の詳細や、同機関が治験に反対した女性職員にかけた圧力の実態などが報じられた。同経営責任者は「証人」資格でCPIで証言をしたが、終わるまでには「容疑者」に変えられるなど、疑惑がさらに深まった。23、24日付現地紙、サイトが報じている。
16日にプレベンチの疑惑を最初に報じていたグローボニュース局は22日、同社最高経営責任者のペドロ・バチスタ・ジュニオル氏が、治験に反対して同社を告発した医師に対し、「ジャーナリストたちに話した内容を撤回し、公表しないように要請しろ」と脅した様子を、同医師が録音した音声記録とともに報じた。
それによると、告発を行ったヴァルテル・コレア・デ・ソウザ・メロ医師はバチスタ氏から、「おまえの人生やこれまでに培ってきたものは水泡に帰す。おまえも同じ穴のムジナだ」「自分で自分の名前を汚すのか。取り消さないと家族にも影響が及ぶぞ。まだ時間はある。取り消せ」と脅された。
ソウザ・メロ医師が「何を取り消せというのだ。アントニー・ウォン医師(73)のカルテは改ざんされていたではないか」と返すと、バチスタ氏は「コロナで亡くなったのではない」と反論している様子を録音した音声だった。
アントニー・ウォン医師は今年1月に亡くなったプレベンチ傘下の病院の医師で、ヒドロキシクロロキンを含む早期治療用医薬品セット「Kit―Covid」を処方されたが、わずか数週間で死亡した。同医師は早期治療の推奨者の一人で、「ネガシオニスタ(パンデミックやコロナワクチンの否定論者)」としても知られていた。
さらに、ボルソナロ大統領を支持する企業家でスーパー「アヴァン」の社長、ルシアノ・ハン氏の母親で今年2月に亡くなったレジーナ・モデスチ・ハン氏(82)も、プレベンチ傘下の病院で「Kit―Covid」の処方を受けていたことが明らかにされた。
ハン氏は以前、「母がKit―Covidで治療を受けていれば助かったのに」と涙ながらに語っていたが、CPIが入手した文書によると、コロナで入院中、数回にわたってKitの医薬品の処方を受けていたことや、カルテが改ざんされ、真の死因は隠されていたことなどが明らかになっている。
ウォン氏、ハン氏の母親の件は共に、プレベンチの現・元医師らがCPIに提出した文書によって明らかになった。
バチスタ氏がCPIで証言を行ったのはこうした疑惑が噴出する最中で、「治験に関する報告は20年6月にプレベンチの医師を辞めたジョッペル夫婦による虚偽の文書」として、疑惑を否定した。
同氏はさらに、「ボルソナロ大統領には治験結果も渡していない」と主張した。昨年4月に行われ、ボルソナロ氏も推奨したネット上での生放送では、治験結果が連邦政府に渡されていたことが、同氏と共に座談会に出席していたパオロ・ザノット医師の口から語られていた。
バチスタ氏はウォン氏やハン氏の母親が自社傘下の病院で治療を受けたことは認めたが、患者に関することは話さないよう家族から要請されているとして、詳細には言及しなかった。だが、二人ともKit―Covidの薬が処方されていたことや、ボルソナロ大統領が保健省外で組んだ疑惑が持たれている「影の委員会」の中心人物の一人のニーゼ・ヤマグチ医師がウォン氏の治療を担当していたことは、同社の医師たちが提出した文書に記されている。
だが、バチスタ氏は「Kit―Covidの使用が死因かはわからない」と反論。ヤマグチ医師も、「自分がウォン氏に関わったのは既に重体になってからで、主治医ではない」としている。
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