ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》ボルソナロ=新公的扶助に一縷の望み=未承認法案を財源に=粉飾?綱渡りの議会運営=大統領には選挙の生命線

《ブラジル》ボルソナロ=新公的扶助に一縷の望み=未承認法案を財源に=粉飾?綱渡りの議会運営=大統領には選挙の生命線

27日の連邦議会の様子(Waldemir Barreto/Agência Senado)

 27日、下院と上院で連邦予算基本法(LDO)を改正する法案(PLN12/2021)が承認された。これでボルソナロ大統領が望む、現在のボルサ・ファミリアに代わる公的扶助制度「アウシリオ・ブラジル」への道が開けることとなった。27、28日付現地紙、サイトが報じている。
 PLN12/2021は下院ではジュセリーノ・フィーリョ下議(民主党・DEM)、上院ではアンジェロ・コロネル上議(社会民主党・PSD)が報告官をつとめ、それぞれ賛成多数で承認された。通常、予算法案改正の場合は両院合同での審議となるが、27日はパンデミックを理由に、下院、上院、別々に審議が行われた。
 PLN12では、LDO126条の「義務的支出が継続的に増額する場合は、他の予算の継続的削減または課税率の引き上げ、新たな税の創設などによる歳入増加で増額分の埋め合わせを行わなければならない」という規定に則り、「税制改革による歳入増加分を、新しい社会保障プログラムの創設に回すことができる」と主張。それが承認された形となった。
 だが、その補償となる税制改革にあたる所得税(IR)改正法案(PL2337/21)は下院で承認されただけで、上院の承認は得ていない。連邦政府はPLN12の審議に先立ち、「PL2337/21による補償は生活扶助に関するプログラムを支援するために不可欠だから、同法案が議会で承認される必要がある」とのメッセージを送っている。
 ただ、PLN12はすんなりと承認された訳ではない。野党議員らはPLN12が承認された経緯を見て、承認されてもいない法案を補償とするなど、「ペダラーダ(粉飾会計)のようだ」との声をあげている。上院では、所得税改革に頼るのではない、より強固な税制改革を望む声もあがっている。
 連邦政府は、今回のPLN12承認は、4月に最高裁が下した貧者救済プログラム「レンダ・バジカ・デ・シダダニア」に関する規定を定め、扶助額を確定するようにとの判断が決め手にあるという。このプログラムは極貧生活者に向けられたものだが、明確な規定や扶助額が定められておらず、プログラムに欠陥があると判断されていた。

 最高裁はこのプログラムを差し止めた際、連邦政府に、多年度投資計画(PPA)と連邦予算基本法(LDO)、年間予算法(LOA)の改正を含む、生活扶助給付実施のために必要な全ての法的措置を採用するよう命じている。
 最高裁による差し止め命令は、憲法上の権利を保証するために、公権力による不作為を是正するために出される。社会保障プログラムに関する差し止め命令は、国は必要な資金を持っていないとの訴えを受けた連邦司法支援局(DPU)が要請していた。
 ボルソナロ大統領が希望するボウサ・ファミリアに代わる公的扶助制度「アウシリオ・ブラジル」の法案はまだ、審議すらされていない。アウシリオは連邦政府が予算繰りに苦しみ、進展を見ていなかった。だが、所得税改革で生じる歳入増分を回すことができれば、実現に近づく。
 ボルソナロ氏は現在、来年の大統領選の世論調査で20%台前半の支持に甘んじ、40%台後半の支持を得るルーラ元大統領に大きく水をあけられている。それだけに、アウシリオの実現は、同氏が弱点とする北東伯対策には特に、欠かせないものと位置付けられている。
 なお、下院と上院はこの日、大統領が8月に裁可した、「パンデミックにおけるデスページョ(借家人追放)禁止」を定めた法案で使った拒否権に対する投票を行い、下院で435対6、上院で57対0の圧倒的多数で拒否権を覆した。基礎教育課程の学校がインターネットの導入や電子機器、デジタル教育資材の取得に連邦政府の資金援助を受け取ることを妨げていた拒否権も覆されるなど、複数の法案で大統領の判断が議会に否定された。