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アジア系コミュニティの今(5)=ブラジル社会への貢献忘れず=台湾編〈8〉

『美洲時報』の斯碧瑤さん(スー・ピーヤオ、通称カタリーナさん)

『美洲時報』の斯碧瑤さん(スー・ピーヤオ、通称カタリーナさん)

ブラジルに慣れるまで最初の1年は辛抱

 「パラグアイの生活は儲かりましたが、多忙な毎日で自分の生活もなく疲れていました。それに比べて、親戚もいるサンパウロでの生活は快適でした」
 5年間のパラグアイ生活を経て、サンパウロで暮らし始めたカタリーナさんは、語学学校でポルトガル語を学び、生活にも少しずつ慣れていった。夫は今日までガソリンスタンドを経営している。
 台湾移民はバザー、パステル販売、レストラン、ガソリンスタンド、医師、弁護士等で生計を立てる人がかなりいた。だが、移住当初は、カルチャーショックで帰国したいと弱音を吐く人々も珍しくなかった。
 そんな時、カタリーナさんは「大変なのは最初の1年。それを過ぎれば慣れるから少しの辛抱」と声をかける。実際、多くの人が1年を過ぎると、ブラジル生活に慣れていくのを見てきた。
 「私たちはフェイジョン料理と言えば甘いのが普通でしたが、ブラジルは肉と煮込みますよね。最初は慣れませんでしたが、今は週一回、フェイジョアーダを食べたいですもんね」

ジャーナリスト兼ブラジルNo.1のセールスレディーに!

 サンパウロ生活に慣れ、書くのが好きだったカタリーナさんは、40歳の時に『美洲華報』に入社した。当時は月給US$150と安く、4年後にはフリーに転身し、新聞社の営業も始めた。
 取材して記事を書くのをやめたことはないが、ペンを片手に営業職でもめきめきと頭角を現した。1999年には化粧品会社ニュースキンの製品販売で、カタリーナさんのグループはブラジル1位の営業成績に輝いた。
 営業センスを生かし、カタリーナさんが2007年の『美洲華報』時代から今日まで、会社をあげて中国(台湾)コミュニティ全体で行っているブラジルへの社会貢献事業が、年に一度のGRAAC(青少年のがん患者を支援する機関)への寄付だ。
 コミュニティの有志がパトロンとなってマクドナルドのチケットを購入し、がんの子供たちに寄付するというもの。肉食をしないパトロンは現金で寄付する。透明性を保つため、寄付してくれた人々の名前は、新聞の一面に購入したチケットの枚数と金額が定期的に掲載される。
 この社会貢献事業も総額がブラジル全土で2位、3位に躍り出て、その功績が認められ、GRAACからブラジルの中国(台湾)コミュニティは表彰された。パンデミックになってからも、セスタ・バジカの寄付や病院に高品質のマスクを寄付するなど、積極的に慈善事業に取り組んでいる。
 仏教徒であるカタリーナさんは、佛光山如来寺のコミュニティの理事も務め、ボランティア活動を行っている。「愛のある社会貢献、皆が喜ぶことが好きです」

『美洲時報』の代表として

 「ポジティブな話題を紹介するのが『美洲時報』のポリシーです。社会貢献を第一に考え、良いニュースを伝えるのが社会への責任です」
 2017年にリニューアル発刊した『美洲時報』の記者はカタリーナさん一人で、アシスタントがいるのみ。パンデミック前までは常に取材に出かけ、皆と食事をしてコミュニケーションをするのが元気の源だった。
 「外出自粛は疲れますね。オンラインになってからはアプリが化粧をしてくれるので毎日すっぴん。おしゃれをする機会もなく、テレビ画面に見える上半身だけフォーマルな服を着るようになって」と笑う。今は職員全員が在宅ワークとなり、カタリーナさんと仕事を手伝う嫁の日系三世のマリさんのみが出社する。(続く)