《ブラジル》連邦議会が緊急支援金の延長要求=新社会保障制度の開始遅れる中、10月で支払期限終了=ゲデスも議会に逆らえず?

連邦政府が進めようとしている新社会保障制度「アウシリオ・ブラジル」成立のめどが立たないことから、連邦議会内で、現行のコロナ禍の緊急支援金(アウシリオ・エメルジェンシアル)を延長しようとする動きが本格化している。14日付現地紙などが報じている。
アウシリオ・ブラジルは、ボルソナロ大統領が「ボウサ・ファミリア」に代わる社会保障制度として発足させようとしているもの。9月末に議会で承認された、基本の枠組みを定めるための法案(PLN)によれば、新たな制度の対象は、従来のボウサ・ファミリアの支給者に緊急支援金の受給者の一部を加えたものとなる。だが、現状ではこの新制度のための予算繰りなどが問題となり、事態が進展していない。
その一方で、緊急支援金の支払いは、10月で終わりになる。今年に入って再実施された緊急支援金の支給額は月150~375レアルで、昨年の支給額の600レアル(家計を支える女性には倍額)には遠く及ばないし、支給対象も減った。それでも、150レアルが支払われないと家計が苦しくなる家庭が続出することが予想される。
アウシリオ・ブラジルの制定、発足が遅れているのは、財源が確保できていないからだ。連邦政府は、州や市への支払い分も含めた、司法命令で生じた債務(プレカトリア)の支払い方法に関する憲法補足法案(PEC)と所得税法改訂案が承認されれば、アウシリオ・ブラジルを導入するための財源が確保できると考えている。
現状ではプレカトリオ関連のPECは、下院の本会議で来週、審議を行い、今月中に承認。2週間後には上院本会議で審議を行い、承認となる見込みだ。そうすれば、政府が考えていた、11月からのアウシリオ・ブラジル導入が可能となる。
経済省はこれらの法案承認でアウシリオ・ブラジルには500億レアルの予算をつぎ込めると見込んでいるが、連邦政府やセントロンのリーダーたちがそれ以上の額を望んでいることも、アウシリオ・ブラジルに関する審議が先に進まない理由となっている。
連邦政府は11月にアウシリオ・ブラジルに切り替えたときに枠外となる緊急支援金受給者約2千万人に対する、移行のための緊急支援金(アウシリオ・エメルジェンシアル・デ・トランジソン、アウシリオ・トランジトリオ)の創設も検討している。これは、パンデミックの影響が解消しないうちに支援が打ち切られ、困窮する家庭が出るのを防ぐためで、支給額は150~250レアル、支給期間は年末までだ。
だが、連邦議会はアウシリオ・ブラジルの即時成立がきわめて難しいと見て、経済省に対して緊急支援金の延長を求めている。支援金の延長であれば、今月中に下院、上院で審議を行い、成立すれば、11月からの支払いに対応することも可能だ。
議会はさらに、水不足に伴う電力不足、電気代の高騰に加え、台所用のガスが高騰しているとして、1460万人に及ぶ低所得者向けに15カ月間、台所用のガス購入のための手当支給法案を成立させようとしている。
パウロ・ゲデス経済相は、緊急支援金の支給を延長すれば歳出上限法に違反することになるとして可能性を否定してきたが、12日には米国メディアのブルームバーグに対して、「新しい変異株が流行すれば」との条件付きで、「緊急支援金を延長する可能性がある」ことを示唆した。ただし、現状では実現はかなり厳しく、一説では、支給額を下げてアウシリオ・ブラジルを開始することも考えているという。
だが、ゲデス経済相には連邦議会に強く反対できない事情がある。それは、パンドラ文書で発覚した、ヴァージン諸島に作ったオフショア企業やニューヨークの銀行にあるオフショア口座の存在で、議会に対しての信頼度が急落してしまったためだ。
また、連邦議会はB案として、「アウシリオ・ブラジルのための移行期間」として、2年にわたって緊急支援金を支払い続ける案の可能性もさぐっている。この場合、このための経費は歳出上限枠外とする意向だ。
いずれにせよ、アウシリオ・ブラジルが実現しないまま、緊急支援金を延長し続けることになれば、アウシリオを22年大統領選の売りにしたいと考えているボルソナロ氏には痛手となる。