「移民の父」が行方不明になった。もちろん、サンパウロ市東洋街ポルヴォラ広場にあった上塚周平の銅像のことだ。先週はあったが、19日朝通りかかると無くなっていた。
誰かが修理のために移動させたのか、それとも盗まれたのか? セー地区役所に問い合わせたところ、「まったく知らなかった」とのこと。修復目的で移動などではない。限りなく盗難の線が濃厚だ。
上塚周平は1876年生まれ、1935年没。熊本県下益城郡出身。東京大学法科卒業後、皇国植民会社の現地代理人となり、1908年6月18日に移民船「笠戸丸」で第1回ブラジル日本移民791人とともに着伯、移民と一緒に苦汁をなめた。18年にプロミッソン植民地を創設。生涯、質素な生活をして移民を見守った人物だ。
最近の不況の深まりにより、サンパウロ市では今年1~9月だけで公道の照明用の電線148キロメートル分が盗まれた。先週土曜日(16日)午前中、リベルダーデ日本広場当たりで電線が盗まれ、付近一帯が停電したばかり。
東洋街でもマンホールや金属製のフタがあちこちで盗まれて、路上に口をあけている危険な状態になっている場所がある。上塚銅像も盗まれて売り飛ばされ、溶かされたか――。
この上塚周平像は、リベルダーデ大通りの角という目立つ場所になることもあって、以前から金属製の碑文や眼鏡が何度も盗難にあっていた。もし盗難であれば「Pai dos Imigrantes」(移民の父)という文字は盗賊の目に入らなかったのか。彼らに偉人への敬意はないようだ。(深)