ブラジルの麻薬密売組織の一つでサンパウロ州を本拠とする州都第一コマンド(PCC)は隣国に進出して活動を活性化しており、ボリビアがPCCの国際的な麻薬カルテル「ナルコスル」の聖地となっていると18日付エスタード紙など複数のメディアが報じた。
ボリビアはコカインの主要産地である上、南米大陸の中央に位置しているため、ペルーやコロンビアなどから来る大麻などの麻薬の中継地としても非常に便利だ。
ナルコスルは、PCCのメンバーと国際的な麻薬密売組織の関係者が集まる麻薬カルテルだ。国際的な麻薬密売者として知られるウィリアン・エルバス・カマッショ(通称マルコラ)が台頭し始めた2002年に、PCCのリーダー達を最初に告発した検察官のマルシオ・セルジオ・クリスチーノ氏は、「PCCの麻薬カルテルのナルコスルは、世界で最も成長している犯罪組織だ」と明言している。
ボリビア国内のナルコスルの拠点はサンタクルス・デ・ラ・シエラ地方で、メンバーは宝石や診療所、レストラン、農園などに投資しており、誰にはばかる事もなく、家族と共に安全に域内を行き来しているという。
ナルコスルのリーダー達の生活の一端は、サンパウロ州に診療所のネットワークを持ち、2020年にグアルーリョス空港で捕まったアンデルソン・ラセルダ・ペレイラ(通称ゴールド)の携帯電話の写真や通信記録、ブラジルの刑務所システムや連邦警察、サンパウロ州市警からの情報などで明らかになった。警察関係者は、ペレイラはボリビアでも同様の投資を行っていると見ている。彼はメキシコや欧州の麻薬犯罪組織との交渉役でもあった。
ナルコスルのメンバー達はヘリコプターや小型機でブラジル北東部に飛び、休暇を過ごしつつ、イタリア最大の犯罪組織Ndranghetaのメンバーと商談をまとめたりする。NdranghetaはPCCが扱う欧州向けの麻薬の40%を扱っており、ボリビアでなら1千米ドル/キロの麻薬を3万5千ドル/キロで売り捌いている。
国際的な犯罪組織との商談増加でPCCの利益は飛躍的に伸び、推定15億レアル/年に達している。これにより、1990年代から続いていたセボーラと呼ばれる月950レアルの月謝徴収は終わった。セボーラは、サンパウロ市に住む家族を内陸部の刑務所に連れて行くためのバスの経費や弁護士を雇う費用、基礎食料品セットの購入費、刑務所にいる仲間へのサービス経費などの支払いに使われていた。
ボリビアとブラジルは警察同士の協力関係が保たれているのに、PCCがボリビアで活動拠点を設ける事ができた理由の一つは、ボリビアの警察が米国の麻薬取り締まり機関であるDEAとの協力を嫌っている事だ。
また、ブラジルとボリビアの麻薬犯罪組織が一定レベルのライバル関係にある事や、ボリビアの警察や軍人の一部は賄賂さえ払えば麻薬密売者達の行動を黙認し、保護する事なども、PCCの進出やカルテル形成を容易にしたとされている。
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