ホーム | ブラジル国内ニュース | 《アウシリオ・ブラジル》市場の混乱止まらず=企業は3日で2840億レ喪失=ドルは一時5・70レアル突破=歳出上限無効化で大パニックに

《アウシリオ・ブラジル》市場の混乱止まらず=企業は3日で2840億レ喪失=ドルは一時5・70レアル突破=歳出上限無効化で大パニックに

パウロ・ゲデス経済相(Wilson Dias/Agencia Brasil)

 連邦政府が20日に新社会保障プログラム「アウシリオ・ブラジル」の11月からの実施強行を発表したことに加え、パウロ・ゲデス経済相が歳出上限を破ることを容認する発言を行ったため、21日の市場が大混乱となり、企業が3日間で2840億レアルを失った。また、経済相の発言を受け、21日には議会が歳出上限を引き上げることを認めたため、選挙資金承認やトラック運転手への支援金支払いといった話も浮上。22日も1ドルが5・70レアル台にあがるなどの混乱が続いている。21、22日付伯字紙、サイトが報じている。
 アウシリオに伴う混乱は、連邦政府が19日に、財源確保もないままに「1人あたりに400レアル支給」で強引に発表しようとした時点からはじまった。19日は発表が中止されたが、20日午後、正式に発表された。
 市場での混乱は19日から始まり、18日は4984億レアルだった株価総額が、21日には4700億レアルに下落した。
 この株価暴落で、ペトロブラスが241億5千レアル、ヴァーレが239億レアル、マガジン・ルイーザが123億レアル、ジオールが81億レアル、アンベヴが75億5千レアルなど、伯国を代表する企業が軒並み、資産価値を失った。
 この状況は21日により悪化した。それは、パウロ・ゲデス経済相が20日の発表後、アウシリオ実施のために歳出上限を破ることを容認する発言を行ったためだ。これに乗じて連邦政府は21日朝、セントロンとの合意の上で、かねてから分割払いが盛り込まれていたプレカトリオ(州や市への支払い分を含む裁判所による支払い命令)に関する憲法補足法案(PEC)に「歳出の超過を認める」ための項目を加えた。
 PECの変更はその日の内に下院の特別委員会で承認され、下院本会議にかけられることになった。これにより、来年度予算案には836億レアルのゆとりができる。連邦政府の試算だと、2022年末までにアウシリオに764億レアルを使う見込みで、支給額引き上げに伴う経費の511億レアルはこの枠から払うつもりだという。

 また、歳出上限が変更されたことで、22年の選挙年に合わせ、連邦議会が政党支援金の引き上げなどを交渉する可能性もある。
 ゲデス経済相が選挙重視の大統領に寄り添う姿勢を示し、歳出上限の基準変更に関するセントロンとの合意にも黙っていたことは経済省内部の怒りを買い、21日の内に局長ら4人が辞任を申し出た。辞任したのは、財務・予算特別局長のブルーノ・フンシャル氏と副局長、その右腕で国庫庁長官のジェフェルソン・ビッテンコート氏と副長官だ。
 歳出上限の無効化に加えた経済省の内乱に、22日の市場はすぐに反応。午前10時11分にはドルが前日から0・81%上昇し、5・7130レアルと5・70レアル台を突破。サンパウロ証券市場(B3)の平均株価指数(Ibovespa)も前日から1・34%減の10万6284ポイントに下がっている。
 21日午後は、ボルソナロ氏が「全国の75万人のトラック運転手に支援金を支給することを考えている」と発表しており、経済省内部の反発を強めた。大統領は財源に言及しなかったが、市場では歳出上限の基準変更で生じる余裕から40億レアルを使う算段と見ている。この部門はボルソナロ氏の支持者が多かったが、このところ支持が落ちている。
 トラック運転手たちは11月1日にストライキを予定しており、21日はディーゼル油の値上がりに反対する燃料輸送車の運転手(タンケイロ)がリオ州の燃料配送会社からの出口封鎖も起きた。
 トラック運転手への支援金支給はリオ州でのストの後に発表されたが、運転手たちはこの発言には否定的で、22日はミナス州でも同様のストが発生。現状では11月1日のスト回避は困難との見方も出ている。
 このような事態に、ロドリゴ・マイア前下院議長は、「これではインフレや利子が高くなってしまい、ボルソナロ氏に対する国民の支持は下がることになる」と分析している。