3日、下院でプレカトリオ(裁判所が連邦政府に命じた賠償金など)の支払い方法に関する憲法改正法案(PEC)の審議と初回投票が行われ、4日未明に骨組みとなる本文が承認された。だが、3分の2をわずか4票上回る接戦だった上に、民主労働党(PDT)も賛成票を投じたため、同党の大統領候補のシロ・ゴメス氏が「大統領選候補を降りる」と抗議を行うなど波乱含みのものとなっている。4日付現地紙、サイトが報じている。
プレカトリオのPECは、ボルソナロ大統領が進める新社会保障プログラム「アウシリオ・ブラジル」の財源確保のためにも、連邦政府にとっては是が非でも通したいものだった。同プログラムは連邦政府が10月末に11月から実施とすでに宣言している。
当面は「ボルサ・ファミリア」の平均支給額189レアルを222レアルにあげた形で17日から支払いがはじまるが、これを大統領が希望する400レアルの支払いにするためにはPEC承認が必須だった。
だが、ルーラ元大統領が作った社会保障プログラム「ボルサ・ファミリア」を廃止し、自身が新しい社会保障制度を作ることを22年の大統領選にむけた功績にしたいと考えるボルソナロ氏への左派側からの反感が強い上、すでに国際市場の受けも非常に悪い。
また、経済省が健全財政を保つためにも固持してきた連邦政府の歳出上限を破ることになることから、同PECが下院で承認されるかは疑問視されていた。
今回のPECでは、自治体などへの支払いを分割して遅らせることで、2022年に916億レアルの財源確保を目的としている。うち470億レアルは歳出上限を破ったものだ。この916億レアルのうち500億レアルが、アウシリオにあてられる計画となっている。
このPECに関して、労働者党(PT)をはじめとした左派が強硬に反対。さらに民主運動(MDB)が反対し、民主社会党(PSDB)も意見が割れるなど、老舗政党からは大きな票が期待できなかった。
そこで、アルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)は中道左派のPDTとブラジル社会党(PSB)に着目し、説得を行った。同議長は3日の審議開始前の時点で、「承認にこぎつけられるかは保証出来ない」としていたが、両党に対し、基礎教育開発基金(Fundef)の返済比率を変更した上で、歳出上限の枠外とするなどの提案を行い、PEC承認に向けた説得を行った。
3日の審議は午後6時からはじまり、投票開始は夜9時半だった。その結果、4日未明に312対144票でPECが承認された。承認に必要な票数の308票をわずか4票上回るだけの接戦で、PDTからの15票、PSBからの10票が利いた形となった。
下院は10月から対面審議に戻っていたが、下院議長団はPEC承認のため、下院の承認を得て旅行中の議員には遠隔参加も認めるという特例措置も施した。
PECが下院を通過するにはもう1回承認される必要があるが、波乱要素も浮上している。4日午前、PDTの大統領候補シロ・ゴメス氏は、「プレカトリオの見解を変えない限り、PDTからは出馬しない」と宣言した。同氏は大統領選の世論調査3位の有力候補で、ルーラ氏とボルソナロ氏に対抗する「第3勢力」の中でも、最大の候補として注目度が高い。
下院では、4日に修正動議を審議、承認した後、9日に同PECに関する第2回目の投票を行う予定だと報じられている。