ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》プレカトリオ下院1回目の投票に問題発覚=最高裁が10億レの秘密予算差止=投票方法にも不正疑惑=9日にも2回目の投票か

《ブラジル》プレカトリオ下院1回目の投票に問題発覚=最高裁が10億レの秘密予算差止=投票方法にも不正疑惑=9日にも2回目の投票か

下院の様子(Pedro Franca/Agencia Brasil)

 裁判所が連邦政府に命じた賠償金など(プレカトリオ)の支払い方法に関する憲法改正法案(PEC)が、4日未明に下院で1回目の投票が行われ、わずか4票差でギリギリ承認された。その際、無理やり賛成票をかき集めたような投票方法に不正があったとの疑惑や、投票直前に連邦政府が10億レアルの秘密予算払い出しを許可して影響を与えていた疑惑が浮上。2回目の投票に影響を与えかねない事態となっている。5〜8日付現地紙、サイトが報じている。
 このPECの承認は、連邦政府が11月から実施しようとしている新社会保障プログラム「アウシリオ・ブラジル」で、ボルソナロ大統領が希望する平均400レアルの支給を達成するために不可欠なものだが、4日の下院では承認基準をわずか4票上回る312票で承認という、薄氷を踏むような結果となっていた。
 これに対し、UOLサイトが5日、このPEC承認のため、連邦政府が10億レアルもの秘密予算の払い出しを認めたと報じた。それによると、10月28、29日に9億970万レアル、投票の実施された11月3日に5200万レアルの、合計9億6170万レアルの支払いが認められたという。
 大事な投票の直前に議員割り当て金を使うプロジェクトを承認することは連邦政府で習慣化されている。だがこれに関し、政府支出の透明性などを審査する非政府団体「コンタス・アベルタス」(公開会計)事務局長のジル・カストロ・ブランコ局長は、「別名『報告官割り当て金』とも呼ばれるこの秘密予算はここ数10年間のブラジルの連邦議会と連邦政府を結ぶ最も汚い制度で、いわば公開メンサロンだ」と発言し、波紋を投げ掛けた。
 報告官割り当て金は、予算案審議の際の報告官の裁量に任せられる予算で、7月に17億5千万レアル、8月に12億6千万レアル、9月に10億1千万レアル、10月に29億5千万レアルの払い出しが認められた上、11月も4日までだけで1億1千万レアルの開放が認められている。5日付エスタード紙によれば、秘密予算の払い出し承認額は12億レアルとされている。

 これに対し、最高裁のローザ・ウェベル判事は、社会主義自由党(PSOL)などが訴えた、秘密予算の払い出しを無効にする訴えを受け入れ、差し止め命令を出した。この命令は予備的なもので、最高裁大法廷での審議によって覆る可能性がある。
 1回目の投票をめぐっては「不正だった」と声をあげる議員も多く、5日には、「1回目の投票は不正」とする下議たちからの訴えが最高裁に提出されている。
 ジョイセ・ハッセルマン下議(社会自由党・PSL)やキム・カタギリ下議(民主党・DEM)、マルセロ・フレイショ下議(ブラジル社会党・PSB)らが起こした訴訟では、英国グラスゴーで行われていた環境会議「COP26」に出席して不在で、投票できなかったはずの下議たちに遠隔投票が認められ、優先的に投票していたことを「違憲行為」としている。
 これと同じ内容の訴えは前下院議長のロドリゴ・マイア下議からも行われ、ローザ最高裁判事が7日、アルトゥール・リラ下院議長に対し、24時間以内に今回の投票のやり方についての説明を求めることを決めた。
 この期限は同議長や下院議長団がこの要請を受け取ったときから数えはじめられるため、8日から24時間となるが、この要請への返答は義務ではない。
 プレカトリオの2回目の投票は9日に行われると予想されている。連邦政府は、1回目の投票で反対の立場から一転して賛成票を投じた民主労働党(PDT)やPSBからの票数が、シロ・ゴメス氏の大統領選出馬否定発言も含めた社会的な批判などを受けて減ることを予想しているが、逆に中道勢力のセントロンからの票が増えることを見込んでいるという。