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《ブラジル》国立教育研究院職員35人が一斉に抗議辞任=ENEM実施の2週間前に

ENEMの受験風景(Marcello Casal Jr./Agencia Brasil)

 8日、国立教育研究院(Inep)の職員35人が、上層部のやり方に抗議して辞表を叩きつける事態が起こった。これは同院が主催する国家高等教育試験(ENEM)の実施を2週間後に控えた中で起こったもので、一部の大学の入試も兼ねた国内最大の学力試験の実施、運営が不安視されている。8、9日付現地紙、サイトが報じている。
 ENEMの受験者は申し込みの際、単一先行システム(Sisu)に志望する公立大学を登録し、複数の大学を同時受験することができる。また、大学受験そのものではないが、通常の入学試験の点数にENEMの結果も加算するという形で入試に利用する大学もある。
 ENEMの重要度は年々高まっており、連邦政府の発表によると、今年度の同試験にも全国で400万4764人の応募があったとされている。今年の試験は、11月21日と28日に行われることになっている。
 だが、その試験実施まで2週間を切ったタイミングで、ENEMを主催するInepで〝反乱〟が起こった。
 Inepの職員35人が、8日に辞表を提出したのだ。まず13人が自分が辞め、その日の内に22人の職員が追随した。その中には、全国学生実力試験(ENADE)のコーディネーターをつとめるカミラ・レイテ・カルネヴァーレ・フレイレ氏のような、影響力の大きな人物の名前もあった。ENADEは14日に行われることになっている。

 辞職した職員たちは4日に開いた集会で、「ENEMを実施するための指揮能力がなく、非常事態が生じた場合の対応などへの配慮がない」として、Inepのダニーロ・ドゥパス院長を批判していた。
 彼らによると、ドゥパス院長はインシデントおよび対応チーム(ETIR)の声を聞かずにENEMの準備を進めており、会場で停電や事故が起きた場合の対応を決めるなど、「ENEMを実施するために不可欠な準備を行ってきたETIRと呼ばれる内部組織を崩壊させた」という。
 この声明の翌日(5日)にはENEMの2人のコーディネーター、エドゥアルド・カルヴァーリョ氏とエリオ・ジュニオ・ロシャ・モライス氏が、また、9月にもデジタル版のENEMの責任者のダニエル・ミランダ・ポンテス・ロジェリオ氏が辞任していた。
 教育省は職員の大量辞任後に声明を発表し、「ENEMは問題なく、予定通りに実施される」との宣言を行った。
 だが、下院の教育委員会は今回の事態を問題視し、ドゥパス院長を10日に委員会に召喚し、事情説明を求めることを決めた。
 同院は教育省の傘下にあるが、教育省はボルソナロ政権になってからの3年弱で4人も大臣が入れ替わった。その間、同院でも5度の組織替えが行われるなど、運営が安定していなかった。
 同院の職員組合はこのような状態に至った事を嘆きつつも、ENEM実現のために職場に残る意向を表明しているが、それと同時に、教育省と連邦政府に緊急の対応を求めている。