【既報関連】9日、「プレカトリオ」の支払い方法に関する憲法改正案(PEC)の2回目の投票が行われ、1回目を上回る323票の賛成票で同PECを承認した。同PECは今後、上院での審議に回される。裁判所が支払いを命じた賠償金などの分割払いを認めるPECが正式に認められれば、ボルソナロ大統領による新社会保障システム「アウシリオ・ブラジル」の平均支給額を400レアルに引き上げることが可能になる。9、10日付現地紙、サイトが報じている。
1回目の投票では、「下院全体の3分の2(308票)」をわずか4票上回る312票で承認という、かなりの接戦だった。1回目の投票では、アルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)が、国外公務で本会議に出席できない人に遠隔投票を認めたことと、本来は同PECに反対だった中道左派の民主労働党(PDT)とブラジル社会党(PSB)を説得して賛成票を入れさせたことが勝因となった。
ただ、この結果に左派支持者が驚き、PDTの大統領候補のシロ・ゴメス氏が「大統領候補を降りる」と宣言したことから、1回目の投票で15人が賛成票を入れたPDTは、2回目の投票では賛成票を投じない旨を伝えていた。
そこで、報告官をつとめるウゴ・モッタ下議(共和者)ら推進派の下議は、PECの中で難色を示されていた八つの条項のうちの七つを取り除くことで2回目の承認を狙った。
その中には、連邦政府が必須とされる負債を払うために2489億レアルの貸付の申請を下院で行うことができるとする、別名「黄金法則」とも呼ばれている条項も含まれていた。これらの条項は、連邦政府が債務返済の遂行が難しい場合の財政責任法逃れだとの見方をされていた。
また、リラ議長は、賛成票を増すために、1回目の投票には参加しなかった中道政党「セントロン」の議員たちに、審議に出席し、賛成票を投ずるように強く呼びかけた。そのため、今回の投票には前回の456人を大きく上回る496人の議員が参加した。
その結果、今回の投票では前回を11票上回る323票の賛成票を獲得し、2回目の承認を得た。反対票は172票にとどまった。
下院の2回の投票で承認を得たことで同PECの審議は上院に回されることになった。上院でも承認されれば、連邦政府が来年支払う額が分割される上、歳出上限を計算するための基準が過去にさかのぼって変更されることで、2022年の予算に916億レアルの余裕ができる。連邦政府は、そのうちの500億レアルを「アウシリオ・ブラジル」に回すことが可能となる。
だが、ボルソナロ大統領自身は楽観しておらず、8日の内に、「下院での2回目の投票は通過するだろうが、上院では困難にぶつかるだろう」との予想を述べている。
それは、下院が承認した案に上院が修正を加える可能性があるためだ。ロドリゴ・パシェコ議長は9日、緊急課題として扱うとの意向を表明したが、PECの内容は憲政委員会(CCJ)で審議した後に本会議にかけられる上、下院が承認した法案には上院で修正が加えられることが多い。
さらにダヴィ・アルコルンブレCCJ委員長は、大統領が送り込みたい最高裁判事の口頭試問を無期延期させるなど、政権とは相性が悪い。また、秘密予算の払い出しに関する最高裁の判断も、状況を難しくすると見られている。
他方、同PECを承認しなかった場合の代替案(緊急支援金の支給延長)による弊害はPECを承認した場合よりも大きいから、PEC承認を擁護する上議もいるという。
9~10日は最高裁で、予算案審議時の報告官の裁量で支出でき、3~4日の下院での審議の前にも払い出しが認められた秘密予算に関してローザ・ウエベル最高裁判事が出した、秘密予算の払い出し差し止め命令に関する全体審理が行われ、8対2でウエベル判事の判断支持を決めている。
ボルソナロ大統領は秘密予算の払い出しは合法と擁護しているが、現状での秘密予算は票集めの手段となっており、ウエベル判事らは財政上の透明性を損ねていると判断している。