23日、下院の憲政委員会で最高裁判事や高等裁判事、国立会計検査院(TCU)判事の定年を早める憲法補足法案(PEC159/19)が承認され、下院本会議で審議されることになった。この法案が承認されると、ボルソナロ大統領が任期中に選ぶことのできる最高裁判事が2人増えることで注目されている。23、24日付現地紙、サイトが報じている。
この法案は2015年に提案・承認された、別名「ベンガラのPEC」と呼ばれるPEC88/15を再び改正しようとするものだ。これは、その当時のジウマ大統領が、70歳定年だと2018年の任期までに最高裁判事を5人選ぶことのできる状況だったことから、定年を75歳まで延期することを求めたもので、両院で承認された。
これを推進した下院議長は、当時からジウマ氏との確執が噂され、2016年に同氏を大統領罷免審議にかけて成立させたエドゥアルド・クーニャ氏であった。
今回のPEC改正審議が行われた背景にはそうした要素もある。だが、下院の憲政委員会委員長は熱心なボルソナロ派として知られるビア・キシス下議(社会自由党・PSL)で、今回のPECが浮上した時から、「ボルソナロ氏を有利にするための法案では」とささやかれていた。
現行法では、ボルソナロ氏が2022年までの任期中に定年退職する最高裁判事の後任指名ができるのは2人(既に指名済み)のみで、実際に就任したのはカシオ・マルケス判事ひとりだ。
ボルソナロ大統領には、自身が強く反対してきたコロナ禍での州や市による隔離対策などを最高裁によって覆され続けてきた経緯もある。大統領はカシオ判事のことを「俺の判事」「自分の票」と呼ぶなどして、かねてから最高裁で自身を優位にしたいという希望を語っている。現在は口頭試問さえ止まったままで、上院での審議さえ行われていない、ボルソナロ氏にとって2人目の指名となるアンドレ・メンドンサ氏も、自身が「筋金入りの福音派」として指名した人物だ。
他方、キシス下議自身も、「最高裁閉鎖」などを呼びかけたことに対する、最高裁主導の「反民主主義捜査」で捜査対象になっている。
このPECは23日の憲政委員会で、賛成35票、反対24票で承認された。今後は特別委員会の審議を経て、全体審議にかけられることになる。
仮にこのPECが下院、上院で承認されて実施となった場合、22年までに、リカルド・レヴァンドウスキー、ローザ・ウェベルの両判事が定年退職することになる。レヴァンドウスキー氏はルーラ政権、ローザ氏はジウマ氏と、いずれも労働者党(PT)政権時に指名された判事だ。
ただし、キシス下議は、特別委員会で現職の判事は今回承認されたPECの対象としないとの文言を盛り込むという約束があるとしており、ボルソナロ氏が指名できる最高裁判事の数は変わらない可能性がある。
また、このPECに関しては、アルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)の最高裁への報復の意もあるのではと囁かれている。リラ議長は、プレカトリアのPECを承認させる際、票の取りまとめのために使おうとした秘密予算(予算案審議時の報告官の裁量で動かせる予算)の払い出しをローザ判事に差し止められている。
なお、下院の憲政委員会ではこの日、最高裁や高等裁、地域裁、労働高等裁、労働地域裁、TCUの後任判事を指名する際の年齢上限を65歳から70歳に引き上げるという、先のPECとは相反する内容のPEC32/21も承認している。