ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》プレカトリオPECを一部前倒し制定=アウシリオ・ブラジル400レアル支給可能に=テベテ上議とパシェコ議長が口論も=両者ともに大統領選候補

《ブラジル》プレカトリオPECを一部前倒し制定=アウシリオ・ブラジル400レアル支給可能に=テベテ上議とパシェコ議長が口論も=両者ともに大統領選候補

テベテ上議とパシェコ議長(Twitter)

 8日、プレカトリオ(裁判所から支払いを命じられた賠償金など)の支払い方法に関する憲法補足法案(通称、プレカトリオのPEC)が下院で再審議される前に分割され、上下両院が共に承認した部分だけが8日に分割発効となった。それをめぐり、上院でシモーネ・テベテ上議(民主運動・MDB)とロドリゴ・パシェコ上院議長(社会民主党・PSD)が激しい口論を繰り広げた。両者ともに大統領選への出馬が有力視されるだけに話題を呼んだ。8、9日付現地紙、サイトが報じている。
 テベテ上議とパシェコ議長の議論の伏線は7日、同議長がアルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)と話し合い、上院が修正を加えた後のプレカトリオのPECを分割し、上院では修正しなかった部分を前もって発効させることを決めたことだ。二人の口論は、両院が共に承認した形となった部分を合同本会議の場で制定、発効しようとしたときに起きている。
 同PECは11月に下院で承認された後、上院で審議された。この際、下院で承認した法案に修正が加えられたため、下院で審議しなおす必要が生じた。だが、全体を再審議していると、連邦政府が11月に発足させた新社会保障プログラムの「アウシリオ・ブラジル」の支給額を12月から、ボルソナロ大統領が公言していた平均400レアルに引き上げるのには間に合わないため、一部分だけでも正式に制定し、発効させることにした。
 上下両院の議長たちは2日以降、繰り返して同PECの審議のあり方について話し合ってきたが、7日はついに、上院で修正が入らなかった部分は両院が承認した部分だから、8日に正式に制定し、上院で修正された部分については14日に下院で審議するとの合意に至った。
 ボルソナロ大統領は新社会保障プログラム「アウシリオ・ブラジル」を導入するための暫定令(MP)を出した際、支給額をそれまでのプログラム「ボウサ・ファミリア」の約2倍の平均400レアルと豪語していた。
 だが、11月の時点ではプレカトリオのPECはまだ審議中で、資金が確保できなかったため、アウシリオ・ブラジルは平均220レアルでスタート。これを400レアルに引き上げるには是が非でも同PECを承認する必要があったが、連邦政府はこの12月から400レアルの支給をと願っており、PECの一部の前倒し制定が必要だったからだ。

 こうして、歳出上限額を算出するためのインフレ率の算定期間の見直しに関わる部分と、地方自治体に対する国の負債を分割払いすることに関わる部分が8日の合同本会議で制定されることになったが、その場で、テベテ上議はパシェコ議長に食ってかかった。
 同上議は「あなたは、私たち政党リーダーたちに対し、下院での再審議は分割案ではなく、一括案で行うと約束したのにそれを破った」と言って批判した。これに対し、パシェコ議長は「そのような約束をした覚えはない」と反論し、「私はただプレカトリオをうまくまとめたいだけだ」と返答した。
 テベテ氏をはじめとした上院の政党リーダーたちは、分割制定や分割審議によって上院が加えた修正に変更が加えられ、上院が望んだ支払い期間や使途が保証されなくなる可能性を懸念している。
 特に不満だったのは、インフレ率の算定期間の見直しによって生じる600億レアルの使途に関し、上院は「この金額をすべて社会保障関連の経費にまわす」ことを定めた「条項4」を加えたが、8日に制定しようとした文面では条項4が外されていたことだ。
 上議たちは、同PECの承認によって生じる資金面でのゆとりが、社会保障に全面的に注がれることなく、11月の下院での審議の際にも問題となった、予算案審議の際の報告官による予算修正による特別支出(別名、秘密予算)などに回されるのではないかという懸念を持っている。
 テベテ氏とパシェコ議長の口論の模様はCNNブラジルをはじめとしたニュースで強調して報道され、話題となった。テベテ氏は同日、MDBの大統領選候補として正式に名乗りをあげたばかりでもあった。対するパシェコ議長も、PSDからの大統領選出馬が有力視されており、その観点からも注目された。
 なお、連邦政府は同PECの一部が前倒しで制定されたことを受け、10日からはじまる12月分のアウシリオ・ブラジルの支援金の支払いは、支給額を平均400レアルに引き上げて行うと発表している。