米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)は29日、2月からFRBによる毎月の債券購入額を2月より、100億米ドル減らすことを発表した。米国が金融危機後に導入した量的緩和策第3弾(QE3)を縮小した形だ。これを受け、新興国は軒並み通貨安を記録し、世界の株式市場も下げた。ブラジルを含む新興国は経済運営上、さらに苦境に立たされそうだと30日付伯字紙が報じている。
FRBのベン・バーナンキ議長は29日に行われた連邦公開市場委員会(FOMC)の後、FRBによる毎月の債券購入額を、現状の750億米ドルから650億米ドルへ削減することを発表した。これはFRBが昨年12月に当時の850億米ドルから750億米ドルに債券購入を削減した時点から予想されていたことで、FOMCでも満場一致で決まった。
これは米国が軌道に乗り始めた自国経済回復により力を注ぐことも意味している。よりも多くの投資が米国に向かうことになり、これも新興国にとっては不利になる。
この決定は、ブラジルを含む新興国には大きな痛手となった。量的緩和であふれ出たドルが、今までは高金利につられて新興国にあふれていた。しかし、QE3縮小とともに米国にドルの形で引き上げられ、それに伴って新興国通貨が大幅に売り越されて下落している。
加えて、今までは中国経済堅調による主要コモディティ価格の安定に支えられていた。これまで10%台の国内総生産(GDP)成長を続けてきた中国が、昨年から成長率を7%台に落とし、それに伴いコモディティ価格が下落してきた。
この流れで、新興国では軒並み通貨の下落現象が起きている。FRBが2012年9月に金融緩和政策第3弾(QE3)を実施して以来、ブラジルのレアルは17・07%減と下落を記録した。それはロシアのルーブル(11・04%減)やインドのルピー(12・43%減)、南アフリカのランド(25・89%減)と中国を除く他のBRICS諸国に関しても同様で、高インフレで経済体質が脆弱なアルゼンチンのペソに至っては41・98%減という驚異的な数字も記録している。
ベネズエラ、アルゼンチンというメルコスル内のブラジル製品の2大購入国がそろって揺さぶられている形であり、いずれブラジルにも影響が出てくるとの観測も出ている。
13年のブラジルの年間インフレ率が5・9%を記録したこともレアル下落の理由の一つだ。さらに言えばインドでは9・9%、インドネシアでは8・4%、トルコでは7・4%となっていた。
こうした新興国の経済的苦境から、世界の株式市場安定を図るためにFRBが今回の金融緩和縮小を見送るのではないかという見方も一部にあったが、米国内の景気を優先して強行された。
トンビニ総裁は、資金流出を防ぐために新興国は金利を上げざるを得ないと見ている。ブラジルでもSelicが10・50%に上がったばかりだが、インドやトルコ、南アフリカでもここ数日で金利が上昇している。