「(『ナムアミダブツ』と唱えて下さい)」
アナジャス軍曹は測量班で一番年上の男に、
「(あの『ブッダ』のミサは熱気があって、理屈なしに安らぎを感じ、すごくよかった)」
「(さっそくミサをしてほしい。事故で亡くした同僚達の為にも)」
「(で、この集まった群衆は?)」
「(ここでは滅多にないチャンスだからな。口伝えで集まったのだ)」
「中嶋さん、始めましょう」
西谷の通訳で中嶋和尚は短い説教をした。
「(今から私が唱えるのは、こーんなに厚い『ブッダ』の聖書を、六つの東洋の文字で『ナ・ム・ア・ミ・ダ・ブツ』にまとめたものです。その『ネンブツ』に追従して一緒に唱えてもらえばきっと皆さんの願いが『アミダニョライ』と云う『ブッダ』に届きます)」
「では、始めます」
中嶋和尚は西谷の「(始めます)」の通訳を待たずして『チ~ン、チ~ン、チ~ン』と御鈴を鳴らし念仏を始めた。
― 『南―無阿―弥陀―仏、南―無阿―弥陀―仏、、南―無阿―弥陀―仏、南無阿弥陀仏、・・・、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、・・・』 ―
と二分ほど続けて、中嶋和尚は語形を簡素化して、
『なーんまーいだー、なーんまいだー、なんまいだー、なんまいだ、・・・、なんまいだ、なんまいだ、・・・』
念仏を続けた。
アナジャス軍曹も中嶋和尚を真似て両手を合わせ、きれいな発音で、
『なーんまーいだー、なーんまいだー、なんまいだー、なんまいだ、・・・、なんまいだ、なんまいだ、・・・』
測量班の一番年寄りも、アナジャス軍曹に習って、
『なんまいだ、なんまいだ、なんまいだ、・・・』
と念仏に加わった。
年寄りが念仏に加わった事で、測量班の他の男達も加わり、やがて祭壇の前の群衆も、前の方から徐々に念仏の合唱に加わっていった。
大人の後ろで、はしゃいでいた子供達も互いに笑顔で顔を見合って大人の真似を始めた。
測量班の炊事係りが集団から抜け出して、飯場からギターを持ち出し、リズムが付いた念仏にギター伴奏を入れた。
― 『なんまいだぁ(ドードードード)、なんまいだ(ドードード)、なんまいだぁ(レーレーレーレ)、なんまいだぁ(レーレーレーレ)・・・』