日立建機株式会社(本社=東京)と農機メーカーのディア社(本社米国イリノイ州)の合弁事業による、油圧ショベル製造工場の竣工式が、11日、サンパウロ州インダイアトゥーバ市の新工場で盛大に行われ、ブラジルミシェル・テメル副大統領、ジェラルド・アウキミンサンパウロ州知事含む、関係者等約700人が参加した。竣工式に先立ち、日立建機から木川理二郎会長、辻本雄一代表執行役執行役社長兼取締役、ディア本社からサミュエル・アレンCEO兼会長、ディア・ブラジルのパウロ・ヘルマン代表らが会見を行った。
W杯、リオ五輪など大きな国際的催しの当地開催を控え、インフラ整備が進むことで建設機械需要が高まることを見込んでの進出となった。
投資額は1億8千万ドル。うち1億2400万ドルがディア社、残りの30%を日立建機が出資し、11年にブラジル進出した。農機の販売で国内90%のシェアをもち、すでに強固な地盤をもつディア社がマーケティングを主に担当する。
両社は、88年に米国ノースカロライナ州で製造販売の合弁会社「ディア日立社」を設立しており、25年にわたり、北中南米における重要なパートナー関係を築いている。今回のブラジルでの合弁事業は、両社で長期的な成長機会をさらに追求するものだという。
20万平方メートルの敷地に、建屋面積約2万5千平方メートルの工場が2つ建てられた。そのうちのひとつが、日立建機とディア社の合弁で建てられたもの。ディア社はショベル以外に、ホイールローダーなども製造する。新工場では、新たなに600人の直接雇用が生まれ、1800人規模の間接雇用を見込む。
工場開設に至るまで、ブラジル、サンパウロ州、同市役所の支援も受けた。会見では、感謝の意とともに、「今後とも支援を」と日立建機の代表ふたりが挨拶し、ディア・ブラジルのヘルマン代表は、「建設分野のみならず、当地の農業発展のためにも自社製品が活躍することを期待する」と語った。
元デカセギも10人雇用
式典後、ディア・日立社ブラジルの竹田孝司副代表に聞いたところによれば、「生産規模は年間1000台だが、生産能力は2000台。今後の需要の高まりに対応しながら生産台数を増やす予定」。すでに増資が決まっており、今後も同分野の発展への期待を語った。
日立建機のメイン工場のある茨城県土浦市は、在日ブラジル人のデカセギが多いことで知られる。デカセギ帰りの日系人の雇用について聞くと、竹田氏は「経験のある、すばらしい人材。震災の影響もあって、茨城の人たちは大勢帰国したが、当地での工場開設に伴い、従業員に声かけた。100人を面接、約10人が、新工場で働くことが決まっている」と明かした。
建設機械の分野は、コマツやヤンマーなど日系企業の活躍が見られる。最近、中国系や韓国系のメーカーが輸入販売で追い上げており、10年あたりから当地での製造も行っているという。
辻本社長は「客の必要に応じた製品開発を信念にもつ自社が、当地で工場開設できたことは、重要なこと」と強調し、当地の客の声を聞きながら、日本ならではのきめ細かなサービスで勝負する意気込みだ。