ニッケイ新聞 2014年2月18日
常日頃、何気なく使ったり聞いたりする表現の一つに、「明日やる」とか「後で」という言葉がある。先日も、「後でやる」という言葉を聞き、思わず「思い立ったが吉日だよ」と切り替えしてしまった▼実はこの言葉は、学生時代に新聞のコラムで読んだ言葉だ。著者によれば、母親が「何かをやろうと思ったら、先延ばしせずにすぐに取り掛かれ」と戒めるために言った言葉だったという。その著者は、「右手で箸を置いたら左足で立ち上がれ」という言葉も紹介していた。ついつい自分に甘くなり、怠惰になりがちな人間の弱さを知った人の言葉だなと思う▼右手首骨折という予期せぬアクシデントから丸5週間。ある日、家でのリハビリの最中に、手の平同士を重ねたまま肘を開いていくという運動をやっていたら、右手の中指が伸びきっていないのに気づいた主人が横から手を伸ばし、中指の部分を挟んだ。その瞬間に激痛が走り、思わず手の平を離してしまった。これは自分に甘くなっていたのを正された例だ▼自分も右腕を骨折した経験を持つ主人は、応援するつもりで手を出したのであり、親が子供をしかったり厳しい要求をしたりするのも、子供の将来を考えての事。冒頭の「後で」の言葉の主は真ん中の娘で、「本当だね。後でと思っていると忘れちゃうものね」と応じてくれた。それを聞き、自分自身ももう一度、「思い立ったが…」という精神を大切にせねばとも思わされた▼もちろん無計画な思いつきは困る。しかし、「後で」「明日」と言っている内に機会を失う事は本当に多い。さあ、今日こそは一日伸ばしにしている仕事に取りかかろう。(み)