米国連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長が11日、「ブラジルは新興国15カ国中、国外からの衝撃に2番目に脆い」と発言した余波が続く中、18日付エスタード紙が、アルゼンチンの通貨危機の影響で、ブラジルの対亜貿易は20億ドル規模の損失を被る見込みと報じた。
12日付伯字紙によると、新興国15か国中、国外からの衝撃に最も弱いのはトルコで、以下、ブラジル、インド、インドネシア、南アフリカと続いている。米国モルガン・スタンレー銀行はこれら5カ国を「5大脆弱国」と呼んだという。
FRBは、過去3年間のインフレ率の動向や、外貨準備高、公的債務、民間金融機関の過去5年間の融資額のそれぞれが国内総生産(GDP)に占める割合などを鑑みてこのリストを作成。新興国が国外からの衝撃や圧力に耐えるためには、この脆弱さを克服する必要があるという。
13日付フォーリャ紙によると、イエレン議長の発言の翌日、米国で開かれた講演会に招かれていたルーラ前大統領は、「ブラジルの経済は安泰だから恐れずに投資を」と呼びかけている。
講演会に出席した外国人投資家らは「自信に満ちた口調で語っていた」というが、2013年のブラジルの経常収支は、2001年以来最悪の、GDP比3・66%相当の814億ドルの赤字を計上した。貿易収支は25億6千万ドルの黒字だったが、こちらも01年以来最悪だ。国際通貨基金は1月、今年のブラジルの経済成長率を前回予想の2・5%から2・3%に下方修正とした。
5大脆弱国はFRBが量的緩和を縮小する可能性を口にした13年9月以降に通貨価値が大きく下がった国でもあるが、今年に入ってブラジルのレアル以上に揺れた通貨の一つは1月23日に約20%急落したアルゼンチンのペソだ。
同国中銀はドル準備を売却して買い支えを図ったが、インフレ高進にペソ急落で通貨危機への恐れが高まった同国では、輸入品の申請許可が1年以上かかる例も出ている上に、輸入業者に国際市場からの融資を受けて物品を購入する事を義務付ける法令を出した。
これにより、ブラジルから同国への輸出は従来以上に大きな障壁に直面する事になる。ブラジル貿易会は、昨年は前年比9%増の196億ドルとなった同国向け輸出が20~30億ドル縮小と予想。ブラデスコ銀行では、39億ドル縮小と更に厳しい予想を立てている。
亜国が新しく設けた輸入障壁の影響が最も大きいと見られているのは自動車業界で、昨年はブラジルからの輸出車両の85%に当たる47万5千台を輸入した同国への輸出は今年、27%減となる見込みだ。その場合、ブラジルの自動車輸出は12年比26・5%増の56万6千台を記録した昨年の1・6%増程度で終わると予想されている。ブラジルコストなどで国際的な競争力低下中のブラジルが、国外要因で再び揺すられようとしている。