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篤志家がブラジリア贈呈=デモで焼かれたフスカの代わりに

ニッケイ新聞 2014年2月21日

ワールドカップ開催に反対する人達が1月25日にサンパウロ市で行ったデモ(抗議行動)で愛車フスカを焼失したイタマル・サントスさん(54)に、パラナ州クリチバ市の企業家が大切にしていた車を贈呈、イタマルさんに満面の笑みが戻った。

イタマルさん一家が愛用のフスカを失ったのは1月25日のコンソラソン通りでの事だ。教会からの帰りに抗議行動参加者らの脇を通ろうした際に、火がついたマットレスがタイヤに引っかかり、車が炎上。乗っていたイタマルさんや妻、5歳の子供ら計5人が助け出される様子や燃え盛る炎、焼け爛れて単なる鉄くずと化したフスカなどは、各種メディアで報じられ、広く知られるところとなった。

金属加工を仕事とし、出来上がった門や窓の柵などを設置したりする時も必要機材などと共にフスカに積み、お客の所まで運んでいたイタマルさんが、毎日の仕事にも支障をきたしていると知った人々は様々な形で寄付を募ったりしていたが、そんなある日、製造年こそ1980年だが、きちんと手入れもされ、傷一つないブラジリアが届けられた。

この車は、パラナ州クリチバに住む40歳の企業家、アルリンド・ヴェントゥーラさんからの贈り物だ。アルリンドさんは、イタマルさん一家が抗議行動に巻き込まれた様子などを報じた映像を見て心痛を覚えた一人でカトリック教徒。神様の前に誓った事柄が成就した暁には、イタマルさんに「カブリット」を贈呈すると心に決めた。

「カブリット」はアルリンドさんが2009年に購入し、今回贈呈したブラジリアの愛称だ。購入前にも8年間、当時働いていた駐車場で洗車などの世話をしてきたという愛車は、エンジンなどの整備や塗装も終えた状態で専用の運搬車に乗せられ、イタマルさんのもとに届けられた。

抗議行動後は笑顔を見せる事もなく、先週も、出来上がった門を抱え、設置場所まで5回も往復しなければならなかったというイタマルさんは、傷一つないブラジリアに目を細め、「荷物を載せるのが可哀想」とも。

人々からの善意の寄付や車を贈呈され、人の情けを体験したイタマルさんは、今度はほかの人を助ける番だと思い立ち、焼け爛れたフスカを近くに住む廃品回収業者に譲る事を決意した。(20日付G1サイト、同日付エスタード紙などより)