在サンパウロ総領事館(福嶌教輝総領事)が主催する初めての「日系市長と若手日系リーダーとの交流会」が25日午前、サンパウロ市モルンビー区の公邸で実施され、サンパウロ州内の19日系市長のうち13人が出席し、アセベックス(留学生研修生OB会)、アベウニ(日系学生医療ボランティア団体)、国際青年会議所(JCI)、インテル・カイカン、文協青年部など若手団体リーダーら30人余りに自らの政治経験を語り、ブラジルをどう良くするかについて熱い討論を交わした。
丹念に地方移住地を視察して回っている福嶌総領事は冒頭の挨拶で、「各地にたくさんの日系政治家が活躍していることに驚いていた。青年の参加なくしてコムニダーデや地域社会の将来はない。日系政治家の存在は日伯関係において重要」と語り、地域の政治家と青年との交流の意義を説いた。山田彰外務省中南米局長も「各国で日系人の貢献は顕著。日本と各国との絆を強めるためにも、青年の力に期待する」とのべた。
出席者の中で最多の28万市民を抱えるスザノ市のトクズミ・パウロ市長(PSDB)は基調講演で、元々は副市長を3期も務めた重鎮・森和弘に依頼されて地元文協青年部、さらに25歳で市議に推され、副市長、市長になったと経歴の発端を説明した。「日系人口が多いと思われているが実は市の3、4%しかおらず、70%はノルデスチーノ(北東ブラジル人)だ」とし、「でも日本人の顔をしているからこそ市民みんなから信用される」と語った。
先週、麻薬密売人の抗争による殺し合い、その報復でバスなど8台が同市内で焼き討ちされ、全伯的に報道された。「警察は20人捕まえたが、うち14人が未成年ですぐ釈放され、悪の道に戻る。この国では法が機能していない」と渋い表情を浮かべた。市長の足元を掬おうする政敵から70件もの裁判を起こされているが、「ここに並ぶ市長はみな同じ経験をしている。それでも市民の生活を良くするためには立ち向かわなければ」と締めくくった。
ノーヴォ・オリゾンテ市(約4万人)のトヨタ・トシオ市長(PPS)も親が福島県出身と自己紹介して「二世であることに誇りを持っている」と強調し、公教育向上に努力した結果、昨年のベージャ誌で同市は州内最良の公教育機関だと評価されたと報告した。
質疑応答に入り、ペレイラ・バレット市の榎本アルナルド市長(PSDB)は、小野ジャミール市長(アンドラジーナ市)、樋口マルコス市長(ヴァルパライゾ市)、山下ヒロシ市長(ラヴィニア市)と奥ノロエステだけで4人も日系市長がいると胸を張った。
福島県人元会長としても有名な小野市長は、「従来は大農場主か大企業主しか市長に立候補できなかった。僕のような農夫の息子が出馬し、しかも当選するなんて考えられないことだった。奥ノロでは地域住民がみな、あの辺の土地は元々日本人が一生懸命に開拓し、後から大農園主が買い取って牧場にしたと知っている。そんな歴史が刻まれ、地域に根っこがあるから日本人が信用され、わずかな選挙費用で当選できた」と語った。(つづく、深沢正雪記者)