JICA研修、募集開始
「欲しいもの買わせない」=接客の価値観に感銘
JICA(国際協力機構)による『平成26年度日系研修事業』の募集が3月1日から開始される。締め切りは5月20日。2013年1月13日~2月24日まで「事業経営セミナー(後継者育成コース)」を受講した上村パウロさん(34、三世)に研修を振り返ってもらった。
サンパウロ州スザノ市の総合遊泳プール施設「Magic City」に勤務し、経営を担当している。姉が過去に1年間、JICA研修を利用したことで制度の存在を知った。同施設を家族が経営者していることから、「後継者としてビジネス理論を学ぶことは必要だと思った」と、応募の経緯を語った。
05年に友人らと20日間訪日しており、文化、人柄、インフラなど全てに好感を覚え、またいつか日本に行きたいと決めていたという。
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セミナーでは経営ビジネスの座学を中心に、集団討論、企業訪問、カップ麺の博物館「カップヌードルミュージアム」など文化施設にも訪れ、幅広く活動した。企業訪問では横浜、千葉、大阪、京都を訪れ、旅行会社や製造業者などを見学した。
「大企業から中小企業まで幅広く視察でき、経営者と直接話す機会は貴重だった」と話す。
同業の娯楽施設にも数か所訪れた。JICA横浜に隣接する「みなとみらい21」、山梨県のレジャー施設「富士急ハイランド」では、「日本のサービスのレベルを感じた。設備、接客など全ての面において素晴らしかった」と評価する。
一例に挙げたのは、研修外での出来事だ。カメラの三脚を買いに家電量販店へ行った際、探しているメーカーを聞かれたが、「店員はそのメーカーを勧めなかった。むしろより安くて評判の良いメーカーを勧められ驚いた」という。「ブラジルであればまず買ってもらうことが先決。お客さんの立場になって別の製品を勧めるほどのサービス精神はない」と感銘を受けた様子。レジャー施設経営においてもそのサービス精神は必要だと語った。
東京ディズニーリゾートや三重県の「ナガシマスパーランド」を挙げ、日本の娯楽施設は世界一だと語る。遊具の技術に関しても、「乗り物は地震対策が完璧に施されている。ブラジルのものは輸入ばかりで国内の技術は進歩していない」と話し、技術力不足も痛感したようだ。
日伯両国の経営理論は変わらないとしたが、「丁寧かつ親切な日本のサービスを取り入れるだけでなく、入念な計画が必要だとより実感した。何か問題が起きた際に、その場しのぎで解決するようなブラジル式の運営ではダメ。あらゆる状況を想定し、いかに対応するかという準備が必要だ」と、経営者としてあるべき姿を求めた。
日語能力初級のコースも=「応募をあきらめないで」
「とても充実した40日間。JICAの助け、支援によって苦労したことは一つもない」と語り、「短期間だが日本の企業、遊戯施設、買い物などまで楽しめた」と笑顔を見せた。
「研修を通して日伯交流の架け橋にもなる。研修体験は親睦を深めるという参加意義も感じる」と心境を語り、「日本語が出来なくても、このコースのように通訳付きや、英語教材もある。選択肢は狭まるが、日本語が少ししか出来ないことを理由に、応募をあきらめないで。自信を持って挑戦して欲しい」と呼びかけた。