ニッケイ新聞 2014年4月4日
リオデジャネイロ市で導入された軍警の治安維持警察隊(UPP)の実際などを学ぶため、南アフリカの代表団が1日にサンタマルタ地区を訪問した。
麻薬密売者組織や警官や消防士、政治家などが関与した犯罪組織(ミリシア)に支配される地区を、公的な治安組織のコントロール下に置くために考案されたUPPは、世界的にも注目を集めており、リオデジャネイロ州保安局関係者や同州警察官は国際的な治安会議にも招かれたりしている。
南アフリカの代表団が訪れたサンタマルタはUPPが最初に設置された地区で、同州軍警のイガラペ研究所と南アフリカの研究所が共同開発中のスマートフォンを用いた治安活動促進システムの実験も行われている。
1日に南アフリカ代表団にも紹介されたシステムは「スマート・ポリシング」と呼ばれ、スマートフォン用のアプリケーションを使って警官のいる位置をリアルタイムで確認したり、中央管理センターにビデオや音声を送ったりする事で、治安活動をより効率的に進める事を目的としている。このシステムが試験的に利用されているのはサンタマルタとサンカルロスのUPPで、南アフリカでも一部の市で同様の実験が行われている。
イグアペ研究所のブルーノ・シケイラ氏によると、南アフリカの特殊部隊は警官の位置特定などに特別仕様のメガネを使うが、スマートフォンを使用すると必要な情報が自動的に送信され、ビデオや音声、移動コースその他の情報の保存も可能になるという。
サンタマルタのUPP司令官は、同システムを使った実験は、「警官の行為や証言の裏づけとしての信頼性を高めるだけではなく、警官への信頼感向上にも繋がる」と満足感を示しており、平定化された地区での働きの改善にハイテクが役立つと評価した。サンタマルタとサンカルロスのUPPでは今年中に同システムを本格始動させる予定で、サンタマルタの警官40人とサンカルロスの警官80人にスマートフォンが配備される。
南アフリカの代表団は警察署の幹部や市役所の責任者、治安問題の専門家ら20人で、1日はリオ州の保安関係者らとの会合後、サンタマルタにある黒人系文化団体「アフロレゲエ」を訪問。2日は中央管理センターを訪問後、治安問題を研究する学者達のセミナーに出席する。
イガラペ研究所のロベルト・ムッガー氏は、南アフリカの代表団訪問は「市街化や暴力、ギャング、麻薬、無職の青年など、よく似た問題を抱えた国同士が互いの経験を分かち合う良い機会」と評価。南アフリカのシトーレ・ムバンガ氏は、ブラジルは治安問題でより進んだ技術や経験を有しているとした後、「UPPはコミュニティと一体化した活動とパトロールを基礎としており、パトロールのみの我々とは違う。新システムは我が国の警察とコミュニティを近づけてくれるはず」として、帰国後はUPPの導入の可否を各自治体と協議していく事になるだろうとの見解を明らかにした。(1日付アジェンシア・ブラジル、2日付フォトス・プブリカスより)