ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | サンパウロ市クラコランジア=強制取締り開始から1年=「以前と変わらず」の声も=常習者の強制入院強化へ

サンパウロ市クラコランジア=強制取締り開始から1年=「以前と変わらず」の声も=常習者の強制入院強化へ

ニッケイ新聞 2013年1月5日付け

 サンパウロ市中央部ルス地区のクラコランジアの一斉取締り(オペラソン・セントロ・レガル)がはじまって3日で1年が経ったが、麻薬常習者は後を絶たず、地域の通りに溢れたままだと3〜4日付伯字紙が報じている。
 州政府によると、12年1月3日にはじまったクラコランジアの取締りでは、1363人の常習者を入院させ、15万2995件の事情聴取を行なったという。州法務局はこの1年の成果について「これらの数字は、取締りが常習者撲滅のために成果があったことを裏付けている」と評価し、「今後はサンパウロ市中央部だけでなく、州全体で運び屋や麻薬の使用の取締りを行なう」と語った。
 だが、この取締り後も特に大きな変化はなかったと評する見方は強い。3日付エスタード紙によると、取締りによる麻薬押収量は100キロほどと、州の検問で押収する量に比べてかなり少なく、逮捕者が763人というのも、サンパウロ市での年間平均の3万人の逮捕者に比べるとかなり少ない。
 また、取調べをはじめたサンパウロ市中央部のクラコランジアでも取締り前と大きな変化が見られない。ヘルヴェチア通りには2日も、「フルクソ」と呼ばれる麻薬の売買や摂取を行なう常習者の集団が150人ほど群がっていたという。中央部クラコランジアの近くで勤務する人たちも、「常習者は居場所を変えてはいるものの、彼らはいつもジュリオ・プレステス駅とリオ・ブランコ大通りの間にたむろしている」と語っている。
 ジェラウド・アウキミンサンパウロ州知事は3日、クラコランジア取締りの成果について、「重度の常習者の強制入院を行ないやすい制度を整える」と発言した。詳細は向こう2週間以内に発表の見通しだというが、一説によると、「酒・たばこ・麻薬センター(Cratod)」の施設を強制入院先とし、医師と共に検察員や判事も配して、常習患者の入院を法的手続きに基づいて決めるというもののようだ。入院させるか否かの判断にはブラジル弁護士会(OAB)のメンバーも加わるという。この方法の適用対象に年齢制限があるのかどうかなどは、現時点ではまだわかっていない。
 この強制入院の対策に関し、医療関係などからは賛成の声もあがっているが、「この制度が発足したら、常習者以外の浮浪者も施設に殺到するのではないか」と危惧する声もある。