ニッケイ新聞 2013年1月8日付け
昨年4月にJICA(国際協力機構)理事長に就任した田中明彦氏(58、埼玉)が視察のため初来伯し、6日にサンパウロ市のホテルで記者会見を行った。田中氏は「日系社会は日本が海外に持つ最大の資産」と話し、これまで行ってきた事業に加え、日系農業者の後継者育成に力を注いでいく考えを示した。
田中氏は記者会見冒頭、ブラジルを「日本にとって非常に重要な国」と評し、今後さらに両国のつながりを密にしていく意向を示した。
当地の日系社会に対しても「これまでのブラジル社会への貢献も含めて、日本が海外に持つ最大の資産。強い関係性を維持していかなければならない」と重要性を強調した。
また、同日午前中にアルジャー市の汎ヅットラ花卉生産者協会の視察などを行ったことを挙げ、日系社会に向けた事業として重点を置いてきた老人福祉・日本語教育分野に加え、高齢化が深刻視される日系農家の後継者育成にも注力する考えを示した。「日系団体の関係者と話し合いながら、どういう形で人材育成に携われるか検討していく」という。
同機構が携わったセラード開発についても「北米の穀倉地帯に依存している状況だった世界の食糧事情を大きく変える存在となる第二の巨大穀倉地帯が誕生したことは、世界的に見ても非常に重要」と話した。 今後は「三角協力」として、モザンビークなどのポ語圏アフリカ諸国に対する日伯が連携して行う技術協力に、セラード開発の技術を活用していくという。
同氏は東京大学を卒業後アメリカに渡り、マサチューセッツ工科大学で国際政治学の博士号を取得。ドイツのルール大学客員教授、東京大学教授、同大学副学長などを歴任し、昨年4月にJICA理事長に就任した。
就任後、世界各国への視察を行っており、南米は今回が初訪問でブラジルは15カ国目。5日から来伯しており、日系団体代表者らとの懇談、イビラプエラ公園の開拓先没者慰霊碑への献花などを行っている。7日にはブラジリアを訪問し、セラード地域の視察、開発商工大臣への表敬訪問を行い、8日からはペルーで視察を行う。