ニッケイ新聞 2013年1月17日付け
沖縄県人会が初のポ語による移民史を刊行した(本日付け7面)。文化継承に力を注いでいるだけに、今までなかったのが不思議なくらいだ。記事にもあるように、ベースとなった90年史の刊行時から計画はあったようで、10年越しの実現となった。翻訳には、留学生OB会「うりずん会」のメンバーらが関わった。「伝えられる」ではなく「伝える」という意志を強くした作業に違いない▼16日付けの同面では、マナウスに移民資料を常設した「エスパッソ・ユマイ」を紹介した。サンパウロでは政府や企業、母県の協力ありきの事業が多いが、高拓会の佐藤ヴァルジール元会長が「地元社会、若い人に移住の歴史を知ってもらいたい」と自費で—というのだから驚く。孤立無援の開拓魂が継承されている証左だ。観光地アマゾナス劇場からも近い。日本文化の発信基地となることを祈りたい▼今年入植100周年を迎えるレジストロでは60周年史、昨年出版の「アリアンサ移住地 創設80年」もポ語版を出版すべく翻訳が進められているとか。われわれの歴史を—という一世、ルーツを知りたいという次世代、それぞれの思いで取り組んでいる。移民世代の最期であることを感じるや切▼さて、一世最後の—という言葉は70周年祭から30年以上言われ続けているわけだが、本当の最後となるか戦後移住60周年。しかし歴史を残す事業には興味がない様子。「首相、大統領を呼ぶ」と荒い鼻息で呼吸困難を起こさないよう気をつけて頂きたい。核に近い人物いわく、日本祭りの軒を借りての式典だけに終わりそうだ、とか。どうなりますやら。(剛)