ニッケイ新聞 2013年1月18日付け
ブラジル内で命の危険に直面しても人権を守るために戦う10人の人々の事をまとめた本が、国連の支援も得て12年末に刊行されたと17日付エスタード紙が報じた。
10人の肩書きは漁師や先住民や宗教家、キロンボのリーダーなど様々で、活動場所もリオ海岸部、バイア州南部、マナウス市郊外など全国に渡るが、共通項は、活動故に命を付け狙われても、保護を受けつつ、活動を続けている事だ。
リオ州漁師組合会長のアレッシャンドレ・アンデルソン・デ・ソウザ氏は、グアナバラ湾での石油開発が環境を破壊し、猟師達の生活を脅かしていると告発を繰り返す内に命を狙われ始めた。妻も脅迫されているというアンデルソン氏は、身の危険故に漁に出られなくなって久しい。
また、バイア州イリェウス地方ブエラレマで先祖伝来の土地の奪還と先住民文化保持のために戦うトゥピナンバ族のロジヴァウド・フェレイラ・ジアス酋長は、2000年代始めに先祖の霊達から「今こそ我らの土地を取り戻す時だ」と告げられ、先住民達の先頭に立ち続けている。
全国先住民連帯運動のリーダーの一人で、2007年から先祖伝来の土地奪還のために戦っているエリゼウ・ロペス氏も、保護を受けている人物の1人。彼の属するグアラニ・カイオワ族のクルズ・アンバ部族は、教育や保健行政の手も届かない南マット・グロッソ州の一角に住んでおり、居住地住民はいつ届くかさえわからぬ政府援助に依存。2010年も4人の子供が栄養失調で死んでいる。
ペルナンブコ州カルアルの犯罪法廷判事のグレイディソン・ベント・アウヴェス・デ・リマ・ピニェイロ氏は、同市で暗躍する、警官も絡んだ犯罪組織の捜査にかかわった事で命を狙われる存在になった。捜査前は年180件起きていた同市の殺人事件は、07年4月の摘発作戦後、120件に減ったものの、常に命の危険と背中合わせで勤務しているという。
1985年から青少年の人権問題に取り組んでいるイタリア人のサヴェリオ・パオオリロ氏(通称、パードレ・シャヴィエル)は、「人権運動家は〃犯罪者を擁護する〃と非難され、否定的な目で見られるなど、極端な精神的圧迫の下での生活を強いられる例が多い」と述懐している。
その他には、ミナス・ジェライス州のキロンボ(黒人居住地)リーダーやセアラ州海岸部クンベ市の地域リーダー、土地なし農民運動家、パラー州ロンドンの土地問題に関わる農村組合員、マット・グロッソ州の土地問題に関わる修道女の名前が上げられている。