ニッケイ新聞 2013年1月19日付け
ブラジル世論調査・統計機関(Ibope)が行った〃ノッサ・サンパウロ〃の調査によると、サンパウロ市民の91%が安全性に不安を感じており、転出希望者も56%いると18日付エスタード紙が報じた。
12年の末に1512人を対象に行った聞き取り調査の結果が発表されたのは17日。サンパウロ市は安全ではない/少し安全と答えた人は91%で、10年の84%から7%ポイント増えている。
〃ノッサ・サンパウロ〃は08年から始まった調査で、ルーラ前大統領がハダジ市政の最優先課題の一つとして治安問題を挙げた直後に発表されたデータは、12年10月から頻繁に言われ始めた〃暴力の波〃による殺人やバス焼き討ち事件を含む暴力事件が市民の不安を募らせ、安全性に欠ける町という気持ちを強くさせている様子を浮き上がらせている。
12年の調査では、条件が整えば転出したいと答えた人が56%いたという数字も、安全に不安を覚えている人やストレス社会からの脱出を望む人が多い事などを反映しているといえよう。
09年から始まった各項目を1から10で評価した数値でも、安全性は3・9から3に低下しており、生活の質に対する評価の4・7同様、調査開始以来、最低の評価となっている。
安全性に不安を感じるのはどんなところでかという質問に対する回答は、〃暴力全般〃が最も多く、〃強盗〃や〃夜の外出が怖い〃などがそれに続いている。
一方、諸機関の名前を挙げて信頼できるかと問うたところ、市警、軍警を信頼できると答えた人が60%いたという。軍警による殺人事件などが取り沙汰される中では想像以上に高い数値と言えそうだが、軍警の一部である消防は88%の人から信頼されている。
一方、市議会への不信感を表明した人は69%で、市の財務監査法廷への不信感64%と合わせて考えると、汚職疑惑などの政界不信が依然として根強い事も伺える。
〃ノッサ・サンパウロ〃の質問項目は169あり、82%が否定的な評価を受けた。ハダジ市長が優先分野とした教育と保健衛生も否定的評価を受けた項目の一つで、教育は11年の5が4・8に、保健衛生は5・1が4・8に低下した。
保健衛生については18日付フォーリャ紙が、市営病院などで診察や検査、手術を待つ人は66万1千人おり、足が弱ったとか腰が痛いという患者だと、神経や筋肉の状況を調べる検査が1千日以上待たされるため、原因が判明して治療が始まるまでに最低35カ月かかると報じている。
順番待ちが多い診療科目は皮膚科5万4482人、耳鼻咽喉科4万9084人などで、検査待ちは膣部超音波7万2517人が最多だ。診察予約は548日先とか、1062日先の検査、103日後の手術といったリストを見れば、保健衛生の評価が低いのも頷ける。