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経常収支赤字で新記録=外国旅行者の支出増も響く=埋め合わせは外国投資で

ニッケイ新聞 2013年1月29日付け

 中央銀行が23日、2012年の経常収支は貿易収支の悪化などを反映し、史上最悪の542億ドルの赤字と発表したと24日伯字紙が報じた。
 12年の貿易収支黒字が2011年比34・8%減の194億3800万ドルであった事は3日付伯字紙既報だが、経常収支は、貿易収支に、輸送や旅行、通信、金融などのサービス収支、外国への雇用者報酬送金などの所得収支、政府間の資金援助などの経常移転収支を加えたもの。12年の赤字額542億ドルは、中銀の統計開始(1947年)以降最悪だった11年の525億ドルを上回る新記録だ。
 赤字増額の主要因は貿易収支の悪化で、貿易収支の赤字に、外国人投資家らの利子や配当金送金や外国旅行者の増加が重なった12月は、経常収支赤字額も月間最悪の84億ドルを計上した。
 貿易収支の赤字が第3週までで27億ドルを超え、外国旅行者も多い1月は、昨年12月に次ぐワースト記録となる83億ドルの経常収支赤字が見込まれており、2013年の累積経常赤字額は650億ドルに達するとの見方もあるようだ。
 ブラジルの経常収支の悪化には、貿易収支の黒字が34・8%減った事と、外国旅行に出かける人が増え、国外で発生する費用が外国から来た観光客が国内で落とす金額を大きく上回る状態が加速している事が大きく影響。12年の外国旅行に伴う出費は222億3千ドルで、外国人旅行者から得た66億4千万ドルと比べると、155億9千万ドルの出超だ。
 外国人旅行者からの収入も年々伸びているが、外国旅行での出超額は2010年に前年比約2倍の107億2千万ドルになって以来、11年147億1千万ドル、12年155億9千万ドルと止まるところを知らない。外国旅行での出費増は国民所得の向上やドル安などの結果でもあるが、最近はドルが持ち直しても出費が増えている。
 外国旅行者の増加は、米国の叔母を頼りに旅に出、移民局で約2カ月身柄を拘留されたサンパウロ市のVLCさん(16)のようなトラブル増に繋がる可能性もあるが、VLCさんは米国滞在を諦めて24日に帰国、母親らと喜びの対面を果たした。
 他方、経常収支の赤字埋め合わせ役だった外国直接投資が減少傾向にあるのは気がかりだ。2014年サッカーW杯や2016年のリオ五輪、高速鉄道(TAV)建設などの需要増や欧米の景気不振で、今後の外国直接投資は増えると見られていたが、12年の直接投資は653億ドルで、11年の667億ドルより1・9%減。12年の経常収支赤字を埋め合わせるには充分だったが、13年の直接投資予想は650億ドルで、史上初めて経常収支赤字額を割り込む可能性も出ている。