ニッケイ新聞 2013年1月31日付け
従姉の夫のアメリカ人が出張でサンパウロに来るというので会うことになり、お互いの都合で朝食を共にした。ビジネスマンだけに「パワーブレックファースト」という言葉も浮かんだが、これは当方の都合で会話はのんきな話題に終始した▼初来伯の印象はすこぶる良く、「特に肉が美味しい」と大絶賛。約1週間の滞在中、肉ばかり食べ、そのなかでもメルカドンのモルタンデーラサンドイッチを「最高だった。何度でも食べたい」と陶然とした表情。人種の違いを感じると同時に、日本人の従姉に「もう少し肉料理を作ってやれ」とメールを打とうかと思っている▼30代後半のコラム子でさえ、肉よりも魚、野菜の方が良くなっているし、加齢と共に肉の量は減っていくのだろう。日本では、肉はあまり食べないほうがいいとされるが、昨今、高齢者の肉食が勧められているとか。結核に罹る高齢者が急増、特にかそけきもので済ます独居老人に多いからだという▼雑誌『サライ』に「定番 朝飯自慢」がある。元気に活躍する高齢者の健康の秘訣を紹介するコーナーなのだが、結構な割合で肉、ソーセージが登場する。肉食が禁じられていた江戸時代、獣肉を食べることを「薬喰い」と称していたことを連想させる▼日本の日本人より、コロニアの日本人の方が栄養価の高いものを食べているはず—と援協に問い合わせてみると、「検査などで結核が判明した話は聞いたことがない」とか。ブラジルでは年間4万人の罹患者がいるというし、ごく近い人も結核の亜種に罹ったのでなんともいえないが、不治の病といわれたかつての食事情にも思いを馳せたいところ。(剛)